23_チーちゃんランクアップ!
アイテムマスターギルドで、山積みされた絶望的な件数のクエストを目の当たりにしたアヤセであったが、帰り際にギルドマスターの老人に、半ば強引に依頼書を十枚手渡されてしまった。
あまりの件数にげんなりしたものの、幸い依頼の内容はそれほど難しいものではなかったので、少しずつこなしていこうと気持ちを切り換えるが、その前に他のギルドへ平行して行えそうなクエストの確認と気分転換を兼ねて訪ねることにした。
冒険者ギルドは、また服のことで絡まれるのを避けるため、お馴染みの初期装備の服に着替え、入口をくぐる。
冒険者ギルドでは、ギルドの営業開始と同時に新規クエストが開放されることから、その時間帯におけるギルドは、受注を奪い合うプレイヤー達によってさながら戦場のようになり、早い時間でほとんどのクエストが無くなってしまうことが多いとのことだった。現に、今の時点で残っているクエストは、報酬が労力に見合わず、敬遠されている不人気クエストと呼ばれるものが数える程度しか残っていない。アヤセは受付の女性からそんな話を聞くに留め、クエストを受注することなく外に出た。冒険者ギルドの貢献度を上げることは、基本中の基本と言われているが、他のプレイヤーと競ってまでクエストを受注するのは効率的ではないと判断し、しばらくアイテムマスターギルドのクエストを優先させようと装備を変更しながら思うのだった。
次に、農業ギルドに向かう。アヤセは、このギルドに所属はしていないが、以前フィールドボス「タダミチの生霊」を倒した際に「種イモ(★2)」をドロップアイテムで獲得しており、これを栽培するための農地を借用すべくギルドの敷居をまたいだ。
照会の結果は、農地はギルド所属員限定で販売、貸出しを行っていて、所属員では無いアヤセは、購入も借受けも不可というすげないものだったが、その代わり、面積が農地の十分の一程度の菜園を借用できるとのことだった。菜園は、王都内にいくつか点在し、土の良し悪し(肥沃度)や場所により月額賃料に違いがあるようで、賃料は、肥沃度の高さに加えて住居と同じく王城に近いほど高額になる傾向にあった。アヤセは肥沃度の高さはもとより、アクセスと賃料のバランスを勘案し、南壁地区の肥沃度がほどほどで月額賃料が平均より少し低い八百ルピアの区画に決める。ちなみに、この菜園は、西門から王城に延びる大通りへ出るのにそれほど時間を要さないことから、これも決め手の一つになった。その後、契約書類へのサイン等の手続きを行い、ギルド所属員以外でも購入可能な苗、種、肥料や安い農具を購入したり、陳列商品のポテンシャルをスキル【一目瞭然】で一通り閲覧して、農業ギルドを後にした。
次にアヤセが向かった先は、サモナーギルドである。
「いらっしゃいませ、アヤセ様。あらっ、服を新調されたのですね! とてもよくお似合いですよ」
ギルドの廊下で、サモナーギルド職員、マルグリットに声をかけられる。
「ありがとうございます。丁度良かった。今日は、マルグリットさんにお聞きしたいことがありまして、こちらに伺わせていただきました」
「召喚獣のことでしょうか? 何でもお尋ねください♪」
マルグリットはヴェール越しに、にっこり微笑む。彼女の明るくて気さくな性格は、人懐っこい笑顔に表われていた。
(先ほどから、こちらをチラチラ見ているプレイヤーが何人もいるのだが……。初めは、自分の深緑装備を見ているかと思っていたけど、どうもお目当ては彼女のようだな)
アヤセは、周囲でこちらを窺う複数の男性プレイヤーの視線に気付く。
確かに、マルグリットは、自分のような本職がサモナーでは無いプレイヤーにも分け隔てなく接するし、召喚獣に関する知識も豊富で、気軽に相談にのってくれるため、初心者にとって色々と頼りになる存在であることは間違いない。
しかも、前回は室内が暗かったことに加え、本人がヴェールを被っていたために気付かなかったが、よく見ると彼女は、目鼻立ちのはっきりとした目の覚めるような美人であった。
(本人の親しみやすさも勿論だが、これほどの容姿だからな……。ファンがつくのも当然と言えば当然かもしれない)
マルグリットは、アヤセをカウンター席へ案内する。周りで様子を窺っていた男達は、親しげに話す二人の様子に色めき立つ。アヤセの背中には、羨望と嫉妬、憎悪が入り混じった視線が突き刺さった。
アヤセは視線に居心地の悪さを感じつつ、案内に従いケピ帽を脱ぎ、脱刀して着席する。
「何というか……。マルグリットさんは人気がありますね」
「何のことでしょうか?」
「いえ、マルグリットさんに話しかけたそうな人が何人もいるみたいですし、これなら、勧誘も捗りそうかな、と思いましたので」
「ああ、そのことですね……」
そう言って、マルグリットは、眉をひそめ困った顔をする。
「最近、当ギルドへの加入をお考えの方々が、相談に来られることが増えたのですが、『契約の器』が高額なせいもあってか、多くの方が決断を迷われているようでして、毎日のように話を聞きに来られるのです。中には、食事をご一緒したら加入をしても良いと言われる方もいらっしゃって……」
(しまったな。マルグリットさんが真剣に悩んでいるのに、今の発言は軽率だった。しかし、マルグリットさんがギルドへの勧誘に熱心なのに付け込んでナンパとは、酷い話だな。立場を利用して食事に誘っている奴は、普通にセクハラをしているという意識はないのか?)
アヤセは、自分の背後で様子を伺うスケベ心丸出しの男達に軽蔑の念を抱く。
「ギルドへの加入を前向きに考えてくださっている方々ですから、無下にはできないと思っていますが、正直申し上げて少し困っている面もあります」
「そうだったのですね。済みません、何も知らないのに、軽々しいことを言ってしまいまして……」
「あっ、私ったら何を言っているのでしょう! 私の方こそアヤセ様に愚痴をこぼしてしまいまして、申し訳ございません」
「いいえ、それは構わないのですが、実際、マルグリットさんに相談したいことが有るのに、煮え切らない態度の未所属の人間の対応で塞がっているようでは、自分をはじめとするギルド所属員が不利益を被ることになりますので、ギルドにその旨を申し出るのも考えなければなりませんね」
(そもそも、勧誘なんて本来のギルドの活動から逸脱しているのではないだろうか? それに、こんな奴らのせいで、肝心な時にマルグリットさんから助言が得られないなんて、そんな本末転倒な話は無いからな。ギルドだって言えば何かしら手を打ってくれるはずだ)
「お気持ちは有難いのですが、そこまでしていただかなくても……。ですが、本日はアヤセ様にお越しいただいて、ほっとしました」
「ほっと、した?」
「はい、このところ毎日のようにお越しになる方々の応対をさせていただいて、少し気が滅入りそうだったのですが、こうしてアヤセ様がお見えになりましたので、応対はギルド所属員の方を優先させていただくという名目も立ちますから。アヤセ様には、私の勝手な都合で、ご迷惑をおかけいたしまして誠に申し訳ございませんが……」
(思っている以上に、マルグリットさんの心労は深刻だな。やはり、ギルドマスター、いや、運営にこの状況を申告しなければなるまい。最も、申告のせいで、次回のアップデートとかで、マルグリットさんがいきなりアイテムマスターギルドの老人のようなNPCに入れ替わったら、それはそれでショックだが)
そんなことを考えつつ、アヤセは返答する。
「迷惑だなんて、自分もお役に立てて何よりだと思っています。しかし、そういうことでしたら、これから毎日、マルグリットさんに会いに来ようかな? あっ、でもそれでは、マルグリットさん目当てに来る人達と同じになってしまいますね!」
「フフッ、確かに同じかもしれませんね! ですが、アヤセ様が他の方々と違う点があります。一つはアヤセ様が当ギルドの正当な所属員であるということです。所属されている方に対しては、お困りごとや、お悩みごとの解決のため、精一杯バックアップに努めさせていただきます。それと、もう一つは、毎日アヤセ様が私に会いに来てくださっても、私は、決して嫌ではないということです。……私のことを気遣ってくださいまして、本当に嬉しかったです。ありがとうございます」
最後の方は、小声でよく聞こえなかったが、自分の咄嗟に言ったつまらない冗談で笑顔を見せてくれたのは、本当に良かったとアヤセは思った。
==========
「それで、今日伺った要件ですが……」
話は途中で雑談を交えつつ、本題に入る。
「はい、お尋ねになりたいことがあると先ほど伺いましたが、どのようなことでしょうか?」
「二つありまして、一つ目は、自分が受けられそうなクエストがないかお聞きしたいのですが」
「そうですね……。アヤセ様のランクで受注可能なクエストでしたら、現在こちらがございます」
マルグリットが机上に置いたのは、五枚の依頼書だった。ギルドの所属員が減少気味とはいえ、そこは戦闘職ギルドである。プレイヤーによる適度なクエストの受注によって、処理は滞りなくされているようで、機能不全を起こしていたアイテムマスターギルドに比べたら件数は明らかに少なかった。アヤセはその依頼書の枚数を見て、物足りなさを一瞬感じてしまうが、アイテムマスターギルドの件数が寧ろ異常だと思い直し、感覚がおかしくならないように気をつけなければならないと思うのだった。
(クエストは「採取」が二件に「召喚獣の獲得報告」が一件、「召喚獣の報告」関係が二件か。まぁ、自分の召喚獣はチーちゃんだけだし、駆け出しは、このくらいのクエストをまず受けろと言うことなのだろうな)
アヤセは、先日「タマモの思念」を報告するクエストを達成したことで、サモナーギルドにおける貢献度のランクは「2」に上がっている。ただし、受注可能なクエストがそれほど多くないのは、プレイヤー同士の受注競争の他に、クエストの達成回数や技能レベル等が受注の条件に至っていない可能性があると考えた。目標としている「契約の器+」の購入のためには、クエストを多くこなし、更なるランクアップを目指していかなければならないが、今は目下のクエストをこなすことくらいしかできないようだ。
「クエストの受注は、最大十件でしたよね? この五件全て受注します」
「かしこまりました。それではクエスト依頼処理をさせていただきますね」
マルグリットは、手早く手続きを済ませる。これで、正式にクエストを受注したと見なされ、ステータス画面からも依頼内容が確認できるようになった。
「早速ですが、達成したクエストがありますので報告をさせてください」
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【クエスト(サモナーギルド)】
召喚獣の獲得(1)
内容:召喚獣(★1以上)の召喚をギルド職員に報告
報酬:貢献度+1、100ルピア、経験値50
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【クエスト(サモナーギルド)】
召喚獣 (ユニーク)獲得(1)
内容:召喚獣(★1以上のユニーク)の召喚をギルド職員に報告
報酬:貢献度+2、500ルピア、経験値50
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【クエスト(サモナーギルド)】
召喚獣の報告(1)
内容:レベル10以上の召喚獣をギルド職員に報告
報酬:貢献度+1、アポー(注:リンゴのような果物)×1
300ルピア、経験値75
====================
「はい、クエストの達成を確認しました。報酬をお受け取りください。お疲れ様でした♪」
マルグリットから報酬を受取って、クエストは完了する。
「ちなみに、今の達成をもって、新たなクエストが追加されたりしないのでしょうか?」
「現在のところ、追加でクエストは出ておりません。日を改めていただきますと、またクエストが発出されますので、明日以降こまめに確認されることをお勧めいたします」
(この程度では、新クエストの出現はないか。それと、クエストは、冒険者ギルドと同じく早い者勝ちのものもありそうだな。本腰入れて貢献度を上げるには、冗談ではなく毎日マルグリットさんのもとに通う必要が出てきたぞ)
「了解しました。クエストを紹介してくださいまして、ありがとうございます。クエストの件はこの辺にして、もう一点伺いたいことの話をさせていただきたいのですが」
「はいっ、何でもお尋ねください!」
マルグリットは笑顔で応じる。仕事に対して真面目で、初心者に親切な彼女は、本当に頼りになる存在だ。快諾を受けたアヤセはチーちゃんを召喚する。
「チーちゃん……?」
笑顔だったマルグリットの表情が曇る。先日、アヤセがクエスト報酬で手に入れた、とっておきの「契約の器」と「召喚獣の思念」で召喚された召喚獣が目の前にいるチーちゃんである。戦闘では、全く戦力として期待できないので、一般的に「ハズレ」と見なされる召喚獣だ。
一方、アヤセに召喚されたチーちゃんは、心なしか不機嫌そうにマルグリットに対し、そっぽを向いているように見える。そして、アヤセに何か訴えるようにジッ、ジッと鳴いている。
「『ど~して、ご主人はチーちゃんに意地悪なの~? この女は、チーちゃんのことを使えない子扱いするから嫌いなの~!』……って言っているのか。でもね、チーちゃんのことをもっと知るために、詳しい人に話を聞かないといけないからね」
「え? あの、アヤセ様……?」
「はい? あっ、念話を喋っていましたか? まだ慣れないみたいで、たまに会話の内容が口に出てしまうことがあるのです。驚かせてしまいまして、済みません」
「い、いえ、そうだったのですね。突然独り言を仰って、どうされたのだろうと思いました」
マルグリットは、アヤセが奇妙な独り言のようなことを突然言い出したので、戸惑った様子を見せたが、理由を聞き納得したようだった。
「それで、伺いたいことは、チーちゃんについてです」
不機嫌なチーちゃんをひとまず脇に置いて、アヤセが話を進める。
====鑑定結果====
【召喚獣】★1
名前 チーちゃん(メージロ(ユニーク))
レベル 15
HP 30
MP 25
親密度 62
スキル 視覚共有、果実探索、青い鳥
============
「以前よりレベルと親密度が上がりましたね。……特に親密度が顕著ですね」
「毎日、オーランジを与えた結果です。食べ過ぎを心配するくらい毎日食べています」
「メージロの好物はオーランジでしたね。それにしても果実のみでここまで成長できるのですね。これは私も知りませんでした」
「自分が達成した、各クエストの経験値も多少影響があるかもしれません。それで、チーちゃんは『★1』ランクの召喚獣ですけど、このランクは上げることはできるのでしょうか?」
召喚獣のランクは素材同様、「★」で表記され、召喚獣の強さは、数字の大きさに比例する。今後、チーちゃんの成長の見込みがあるかアヤセは確かめたかった。
「そうですね、チーちゃん、これを見て」
マルグリットは手のひらに赤く光る石のようなものを載せ、アヤセとチーちゃんに見せる。
「これは、チーちゃんが強くなれる魔法の宝石よ」
「『宝石ってなんなの~?』……って言っています」
「これは、召喚獣のランクを上げる『魔石』です」
「『本当に、これでチーちゃんのランクが上がるの~?』……って言っています。そんなアイテムがあったのですね」
「はい。★1の召喚獣を★2にランクアップさせるのには、魔石一つで可能です。親密度も十分ですから、今すぐ使えますよ」
「本当ですか? それなら早速使用して……。いや、魔石は貴重なのではないでしょうか? それをチーちゃんに使ってもいいのですか?」
マルグリットは、アヤセの問いに直接答えずチーちゃんに話しかける。
「チーちゃんは今のご主人は好き?」
「『うん、ご主人は、いっぱい果物をくれるし、チーちゃんをダメな子って言わないから大好きなの~』……って言っています。……チーちゃん、恥ずかしいこと言わせないで。あと、『今の』ご主人って?」
「そう、それは良かった。チーちゃん、この前は、チーちゃんのことをハズレの召喚獣みたいな言い方をしてごめんね。お詫びにこれをあげる。だから、これからも強くなってご主人のためにお役に立てる召喚獣になってね!」
「『メグが分かってくれればいいの~! チーちゃん頑張るの~!』……って言っています。……え? 光った?」
チーちゃんはマルグリットから受け取った魔石を使用する。これによってチーちゃんは、数秒間光に包まれ、元に戻った。
=個人アナウンス=
チーちゃんが「進化の魔石」を使用し、★2にランクアップしました。
====鑑定結果====
【召喚獣】★2
名前 チーちゃん(メージロ(ユニーク))
レベル 15
HP 44
MP 42
親密度 62
スキル 視覚共有(2)、果実探索(2)、青い鳥(2)
============
(見た目が全く変わっていないが、ステータスが上がった!? 召喚獣は進化アイテムを使用して「★」のランクが上がる仕組みだったのか!)
チーちゃんがランクアップしたことに驚くアヤセ。
(いや、驚くのはこの点も同じだが、もっと驚くことは、チーちゃんが自分より前に主人がいたということだ。それとマルグリットさんとも知り合いの可能性があることも見逃せないな)
「あの、二人(?)は知り合いなのですか? それと、チーちゃんって前にも召喚されたことがあったのですか?」
アヤセがマルグリットに尋ねる。
「ええ。実はチーちゃんとは、前から見知った仲です。ただ、念話を通じて会話をしたのは今回が初めてですが。これまでチーちゃんは何度か『売却』されたことがありまして……」
「『売却』、でしょうか?」
「はい、サモナーの職業専用スキルには、一度召喚した召喚獣を召喚獣の思念に再封印できるものがありまして、チーちゃんを召喚された方が、スキルで再封印を施して、思念を売却するという経緯で何度か当方に戻ってきたのです」
「そうだったのですね……。チーちゃん、苦労したんだね」
(でも、待てよ、自分が報酬で獲得した「召喚獣の思念」はランダムだったはずだ。召喚時にランダムで召喚される召喚獣が決まる思念なのか、それとも、報酬で貰った時点で召喚獣が決まっている思念をランダムで貰えるのか……。どの時点の「ランダム」になるのかによってずいぶん話が変わりそうだ)
場合によっては、不良在庫を処理するために、ギルドが意図的にチーちゃんを掴ませることだってあるかもしれない。
「決して安価ではない『召喚獣の思念 (ランダム)』を購入されて、チーちゃんを召喚された方のお怒りと失望の様子を何度も見てきましたので、アヤセ様が召喚された際も、正直申し上げまして、他の方と同じような反応をされると思っていました。ですが、ここまで愛着を持たれている様子を拝見して、なんだか嬉しくなってしまいまして、ささやかですが、私もチーちゃんの成長を応援したいと思い、魔石を提供させていただいたのです」
「ちなみに、『召喚獣の思念 (ランダム)』は普段でも購入できるのですか?」
「はい、『召喚獣の思念 (ランダム)』は、当ギルドで販売している召喚獣の思念のうちの一つです。文字通り、当ギルドでお求めいただけます思念全種類の召喚獣の中から召喚時にランダムで召喚獣が決定されます」
(闇鍋ガチャみたいなものか。契約の器だけでなく思念自体もそれなりに値が張りそうだし、リスクもかなり高そうだな。それとマルグリットさんが魔石を提供してくれたのは、イベントの一環だろうが、チーちゃんのイベントだろうか? それともギルド関係? もしかしたら、マルグリットさんに関わるイベントかもしれない。いずれにしても、チーちゃんの親密度がトリガーになっていることは間違いなさそうだ)
アヤセは、先ほどのマルグリットとの会話の中で、チーちゃんの親密度について言及があったことから、そう推測する。また、今後もチーちゃんとの親密度を上げることによって、新たなイベントが発生するかもしれないと考えるのだった。
一方、チーちゃんは、ランクアップがとても嬉しかったのか、興奮気味にアヤセに鳴き声で訴えかけていた。
「アヤセ様、チーちゃんはなんて言っているのでしょうか?」
「ええと、『ご主人、みてみて~! チーちゃんランクアップなの~!スキルも強くなったから、もっとご主人のお役に立ってみせるの~!』……って言っています」
「まぁ! 頼もしい。アヤセ様……。私が言うのもお門違いだと思いますが、今後も、チーちゃんのことをどうぞよろしくお願いしますね」
「ハズレ召喚獣」のレッテルを貼られ、多くのプレイヤーから邪険に扱われてきたチーちゃんと「ハズレ職業・アイテムマスター」として周囲から軽んじられてきた自分は、境遇が似ているかもしれない……。それに気付いたアヤセは、新たな力を得て喜びを見せるチーちゃんに対し、より一層の愛着が湧くのだった。
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