彼への想い

第16話

「あと、1ヶ月でコンクールだね」



音楽室の壁に掛けられているカレンダーは、コンクールの日付が赤く囲われている。



指で示しながら、東条さんは言った。



「コンクール当日は来る?」



当日の伴奏は、羽田先生がすると聞いている。



だから、見に来てくれると嬉しいんだけどな。



そう思って聞いたのに。



「ごめんね、その日は大学でどうしても抜けられない講義があるんだ」



「……そっか」



分かってる。



これ以上の我儘は言わないよ。


困らせたらダメだもんね。



「あと、どの位……」



そばにいられるのかと、言葉に出して聞く勇気が尻窄みになってしまう。



カレンダーから目を放し、私に向ける視線は優しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る