第6話

1週間前の、放課後の音楽室。


皆が帰った後、羽田先生に『ソロパートの練習がしたい』と無理を言った。



そんな私の為に、羽田先生は東条さんにピアノの伴奏を頼んでくれた。



二人きりになる手伝いを、彼の想い人にさせるなんて、私は意地悪だ。



だけど、東条さんは嫌な顔ひとつせず練習に付き合ってくれた。



東条さんのピアノの旋律に自分の声が乗ると、気持ちが高揚していく。



幾らでも歌えるような気がした。



「笹原さん、声が綺麗だよね」



褒めてもらえた時は、泣きそうになった。



優しく笑ってくれたから、自分でも無理だと思っていた我儘を、いう気になった。






人生初の賭けに出た。

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