第12話

進藤くんの事はよく知らないから。



そんな風に話した高校入学1日目。



だけど、その日から登校すれば目の前に進藤くんの背中があって、嫌でも彼が視界に入ってくるようになると、彼の癖や行動に興味が湧いた。



「おふぁよー、園田さん」



毎朝眠そうな顔をして、欠伸まじりにおはようと言う彼。



前に腰掛けた進藤くんの、襟足の少し伸びた青みを帯びた黒髪の右後頭部には、枕で押し潰されたような寝癖の後をよく見かける。



髪、セットしたりしないのかな?



「進藤くん、またソコはねてるよ」って教えてあげると慌てた様子で手櫛で直そうとする。



「俺、髪固くてさぁ、なかなか直んねーんだ」



髪質のせいだけじゃないでしょ。ブローとかすればいいのに。



言い訳が子供みたいで笑えた。



それから、授業中気付けばシャーペンを指でクルクル回している。



癖なのかなって思ってたら、たまに連続して回せた事を喜んでいるみたいに「ヤッタ!」なんて、小さく声が上がる時がある。



それに気付いてからは、私もついついシャーペンの回転を目で追ってしまって、彼と同じタイミングで小さくガッツポーズしたりしてた。



進藤くんって、なんだか面白い人。

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