第9話

「園田さん、」



躊躇いを含んだ声が、廊下へ出ようとした私の背中に掛けられた。



振り返れば、進藤くんが少し緊張したような表情で私を見ている。



う、なんだろ。



すっごく気不味いんだけど。



私の気持ちを読み取ったかのように眉を寄せた進藤くん。



「あのさ、気不味いかもしれないけど同じクラスになったんだし、出来れば普通にしてくれると助かる」



移動する周囲の雑音に消されそうな、頼りない声。



本当なら進藤くんの方が私を見たくないかもしれないのに、こうして気を使ってくれたんだ。



その気遣いに、申し訳ない気持ちになる。



「う、うん。せ、折角クラスメイトになったんだもんね。と、友達としてよろしくっていうか……」



私なりの精一杯を汲んでくれたようで、進藤くんは嬉しそうに顔を綻ばせて「サンキュ」と呟くように言った。

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