第2話

「…….園田さん」



体育館に入って、一つしまい忘れられたバスケットボールを手にした時、背後から声をかけられた。



振り返って、声の持ち主を認めて首を傾げた。



見覚えはあるけど名前が咄嗟に出てこない。



「え、と?」



だれ?と問うには相手に失礼かなって思いもあって、言葉を濁した私に目の前の男子が「あぁ、」と落胆まじりに声を零した。



「隣のクラスだった、進藤(しんどう)だけど……」



「あぁ!」



思い出した、とばかりに声が出てしまって、慌てて口を手で塞いだ。



思い出した……進藤くんだ。



確か……進藤 伊織(しんどう いおり)くん。



3年間一度も同じクラスになる事はなかったけど、一度だけ2年の体育祭の時同じ委員で仕事をした事があった。



「進藤くん、どうしたの?」



言葉を交わすのも久しぶりだ。同じ委員の時ですら必要な事以外喋った記憶がない。



「あのさ……えっと、」



進藤くんは私との距離を1メートル開けたまま、迷っているような表情をした。



「……?」



私はただ待つ事しかできなくて。



頭の隅っこで、ミス◯に行って何食べようかななんて事を考えていた位だ。



目の前の男子、もとい、進藤くんが何を迷っているかなんて興味もなかった。

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