第8話

(甘いのは先生の方です。)




白衣から仄かに香る甘い匂い。




チェリーのロリポップの匂い。




あたしの好きな味。




鼻をクン、と鳴らしながら先生は耳元に囁いた。




「この匂い好きだな」




(知ってます。だから毎日部屋で焚いてるんですよ、ストロベリーサンデーのアロマ)




甘ったるすぎて本当はあまり好きじゃないんですけど。




先生が好きだから、先生が好む匂いをまとってココに来るんです。




「三月…」




長く骨張った指が、あたしの唇に触れた。

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