第20話

「泣いてるだろ?」





あっという間に両手首を掴まれてしまう。





泣いてないと言い切ったのに、両目から涙が溢れては落ちていくから、どうしようもない。





(先生の馬鹿、こんな情けないカッコ見られたくないのに!放っておいてくれたらいいのに)





「先生、手を離して下さい。」





懇願するあたしの顔を、先生はジイッと見つめる。





涙でぐちゃぐちゃの顔を見られたくなくて、あたしは顔を背けた。





瞬間、先生の手があたしの二の腕を掴んで自分に引き寄せた。





背の高い先生の胸にぶつかるような形で、顔をその胸に埋めた。





「これなら見えないだろ?」





そりゃ泣き顔は見られずにすむけど、この姿勢はッ…言わば、これは抱き締められてるという状態では?

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