prologue:小さな奇跡
第1話
あの日の天気予報は朝から雨だった。
台風接近に伴い風も強く、昼前には暴風域に入るとかで県全域で暴風警報が発令されていた。
その為、高校の授業も短縮授業に変更され通常よりも早い下校時間となった。
早くも近くの川が氾濫したとかで、道路に泥水が溢れローファーの足元は滑りやすくなっていた。
傘なんか役に立たない状態で、みんなずぶ濡れ状態で一心不乱に自宅への帰路を急いでいた。
視界も十分に見えなくて、だから俺がその子に気づいたのは後から考えれば奇跡に近かった。
最初に気付く切っ掛けになったのは、猫の鳴き声。
それすらも雨風の音に消されそうな位小さくて、なんとか聞き取れた程度のもの。
ふ、と耳に掠めたその鳴き声の持ち主に意識を向ければ、傘もささずしゃがみ込む女子の姿を見つけた。
あんなところで何やってんだ。
不思議に思ったけれど近づこうとは思わなかった。
今はただ一刻も早く家に帰りたかった。
徒歩圏内にあるとはいえ、あと1㎞は歩かなければならない。
足もびしょ濡れで気持ち悪いったらなかった。
寄り道をする気分は全くの皆無。
けれど、猫の鳴き声に混ざって聞こえたか細い声が耳の中に滑り込んできた。
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