第76話
「あれ?市原も一緒に来るって言ってなかった?」
宇野くんの声に市川さんを見ると、彼女が困惑した様子で私を見ていた。
「市原さん、行って?」
「で、でも……」
今の状況で私が出ていくことがあまりよくないと、彼女も思っているようだった。
でもこのままじゃ、宇野くんに私も見つかってしまう。
隣にいる彼女と宇野くんの関係が分からない状態では会うことはできないよ。
市原さんの背中を強引に押して、私は彼らから少し距離をとった。
声が聞こえない所まで離れて、彼らの様子を見ていた。
久しぶりの再会に宇野くんもとても嬉しそうに見えた。
私だって、あの輪の中に入りたかった。
隣にいる彼女は一体誰なんだろう?
綺麗な人だった。
背の高い宇野くんの隣に立つ彼女は、宇野くんととても似合っていた。
まるで恋人同士みたい……。
不安的中?
でも、ただのクラスメートかもしれないし、友達かもしれない。
そう思いつつも、目の前で宇野くんの腕に抱きつく女の子の様子を見ていたら、分からなくなる。
とてつもなく不安になった。
市原さんが、こっちを気にしているのが分かった。
でも今さらあの場に出ていくことはできなくて、スマホを取り出して彼女にRINEを送って私は彼らに背を向けて歩きだした。
『先にホテルに戻ってるね』
ここに私がいたら、きっと高田くんにも市原さんにも気を使わせるのが分かったし、久しぶりの再会に積もる話だってあるはずだ。
今は離れよう。そして、市原さんからまた話を聞けばいい。
そう思って、逃げるようにして離れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます