「なんで高田が誤解してるのか、だね。私から話してみようか？」

「そ、そんなことをしたら、市原さんまで高田くんに怒られたりしない？」

私の為に高田くんに聞いてくれようとすることは嬉しい。でもそれで市原さんと高田くんの関係が気まずくなるのは嫌だ。

心配する私のとなりで、千早さんがクスクスと笑う。

「いいの、いいの。イチに任せたら？イチにとっては高田に近付くチャンスになるもんね」

「え？」

「な！千早、あんたねぇ……」

肯定も否定もせずに市原さんはただ顔を真っ赤に染めて、千早さんの持っていた花柄のポーチを取り上げて体の後ろに隠した。

「あーん、本当のこと言っただけじゃない。そのポーチお気に入りなんだから返してよー」

泣き真似をしながら、市原さんに向かって手を伸ばす千早さんを他のみんなは苦笑いで見ていた。

市原さんって、高田くんのことが好きだったんだ。

だから、私が彼に近付くのが気になって仕方なかったんだね。

「市原さん、ごめんね。私が高田くんに近付くの嫌だったよね」

「ちょ、いろはまでー。わ、私は別に高田のことなんて……」

高田のことなんて、と言いながらも恥ずかしそうにしている彼女の様子はまさに恋する女子そのもので。

私が宇野くんを想う気持ちと同じなんだと思ったら、なんだか微笑ましかった。

考えてみたら、女子とこんな風に恋バナをするのも初めてだって思った。

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