「ところで、いろはは、高田に何が聞きたくて毎日頑張ってるわけ？」

お弁当を食べ終わって、お喋りに花が咲く中、市原さんから、改まった表情で聞かれた。

他のメンバーもあからさまにはしないけれど、気になるのか視線が私に集中する。

「……宇野くんのこと」

「宇野って、宇野色葉？」

岡本さんが宇野くんをフルネームで言って、私はそれに頷いた。

「宇野って言えば急に転校したんだったよね」

「噂は少し前からあったらしいよ。あそこ去年の秋頃に両親が離婚したんだよね？」

「え？」

「いろは、知らなかったの？」

「知らない……」

岡本さんと市原さんが話す内容をボンヤリと聞いていた。

宇野くんのご両親は弁護士の父親と、客室乗務員の母親が居て、2人はとても多忙でほとんど家に帰ることはなかった。

両親がすれ違いの生活の中で、いずれ離婚を考えても不思議はないくらい冷え切った関係だったらしい。

「噂だけど、多分間違ってないと思うよ。うちの母親が宇野くんの母親と親しくてて、本人から聞いた話だから」

江藤さんがそう言ってちょっと言葉を詰まらせた。

「離婚が決まった時、両親が揉めたんだって。宇野くんをどっちが引き取るかって。2人とも忙しくて子供の世話どころじゃないって、押し付け合いみたいになって……最後は確か父方の祖父の家に引き取られることになったんじゃなかった？」

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