第27話

だけど、嬉しかったり、楽しい事もあった。


他のボランティアさん達と仲良くなって、一緒に図書館で行われる絵本の読み聞かせ会の掲示物を作ったり、絵本の読み聞かせにきた子供達の真剣な表情に触れ、「楽しかった!」と喜ばれた時は本当に嬉しかった。


自分達が関わった事で、誰かが喜ぶ姿を見ることができることの素晴らしさを知ることができた。



「宇野くん、私ね図書ボランティアして良かったよ」



知らなかった世界を知ることができて、嬉しかった。


それも、宇野くんが一緒に図書ボランティアに参加してくれたおかげ。


私の世界が少し広がったのは、宇野くんのおかげなんだ。



「俺も、良かったよ。いろはのそんな嬉しそうな顔を見ることができて」



いろは、と呼ばれた瞬間、胸がトクンと小さく跳ねた。


男子に名前を呼ばれたのは、初めてだった。


そして、それが宇野くんだから、もっと特別に響いた。



「宇野くん、ありがとう」



そうお礼を言うのが精一杯で、他に何も言えなかった。


もっともっとたくさん言いたいことはあったはずなのに、胸がいっぱいで、苦しくて、何も言えなかった。


私、宇野くんとこんな風に話せるようになって、彼に優しくしてもらえて、本当に幸せ者だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る