第10話

「宇野くんって、こういう所によく来る人?」


「よく使うよ。家も近いし、静かだし、エアコンもきいてるから」



つまり、出没頻度が多いということか……。


これはしまったな、と思った。


図書館なんて、学生なら誰でも利用する場所を選んでおいてなんだけど、1人になりたくて来る場所に、声をかけて来るような知り合いがいるのは困る。


たとえ見知った顔でも、声さえかけて来なければ、私の存在を無視してくれるなら、それはいないと同じで気にならないのに。


彼は私だと知って近づいてきた。


明日からは、ここには来れないな。


小さく吐いた溜息は、思いの外相手にしっかりと届いてしまったようだ。



「迷惑そうな顔するなぁ。御門さんって、正直な人だな」



あからさまな態度を取ってしまった事は、少し後悔した。



「ごめん」



謝った事で肯定したことになったから、宇野くんが一瞬驚いてから「ハハッ」と笑った。



「そこは、否定しろよ」


「あ、えと……ごめん」


「別に、いいけど。邪魔したのは事実だし」



たいして気を悪くした様子もなく、宇野くんは私が持ってきて置いておいた本を一つ一つ見ている。

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