第14話

目の前の比呂が頭を掻きながら小さく溜息をついた。


仕方ないなぁ、とでも言いたげに。


そんな彼の様子を自然とにやけて緩む頬を引き締めて、比呂を見つめる。


1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒……


ん?


なんだか、微妙に長い沈黙に首をかしげた。


けれど比呂から視線を逸らすことはせずに。


「7秒、って結構長いよな」


思っていたものと違う言葉に、キョトンとしてしまう。


「比呂……?」


呼びかけた声を遮るように、比呂は急に姿勢を正して真剣な表情で私を呼んだ。


「寧々、ペリドットの宝石言葉知ってるか?」


「え、何急に……え、と、」


咄嗟には出てこなくて焦る私に、比呂は低く穏やかな声で教えてくれた。


「夫婦の幸福っていうんだよ。この指輪を大事に持っていればさ、夫婦が幸福でいられる。でもさ、俺が幸せになるにはこの指輪だけじゃダメなんだ。寧々が一緒じゃないとさ。だからこの指輪と一緒に俺の事をずっと傍にいさせてください」


思いも寄らないセリフに声が出てこない。


だって、今まで私ばかりが比呂を好きで、比呂じゃなきゃダメで……。


それなのに、比呂も同じなの?


私を必要だと言ってくれるの?

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