第14話
本村とキスをしたことを、自らの口で話した夜、彼は何も言わずに家から出て行ってしまった。
そして、1週間経つ今日迄、彼は二度と家に来ることはなかった。
あぁ、これで終わりなんだ。
あんまりにも簡単な終わり方に、涙も出てこなかった。
相変わらず食欲もないままで、それでも仕事の納期は容赦なく迫ってきていて、私は仕事に集中した。
朝起きて仕事に行って、定時まで仕事をして、家に帰って倒れるように寝る。
それを繰り返して、健太と別れた日からさらに1週間が過ぎていた。
「柾田、お前顔色悪い。飯ちゃんと食ってんのか?」
あの日以来避け続けていた本村が、気付けば目の前に立っていた。
「食べてるし、本村には関係ないから」
「……とにかく、少し休め。部長も心配してる」
部長の名前が出てきて、席の方を見ると口パクで「休みなさい」と言っているのが何となく理解できた。
部長命令だと言われたら仕方ない。
別に疲れているわけでもなかったけれど、机から離れて一息入れることにした。
「ほら、」
本村からお茶のペットボトルを渡されて、大人しく受け取る。
「ありがと……もういいから、本村は戻って」
「俺も休憩するんだよ」
そんなの絶対ここにいる口実だと思うのに、それを拒否する気力もなかった。
健太と別れて……っていうか、そもそもただのセフレが飽きて捨てられたってだけの話だ。
いつかはこうなることも分かっていたはずなのに。
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