第24話

「山瀬さん達社食で食べてたんだ」


頭上から降ってきた声に驚いて見上げた先に、敷島さんがいた。


「敷島さんはお昼終わられたんですか?」


「いつも行きつけの食堂でね。品数は多いし安いしで、独身男性結構多いよ」


「どこのお店なんですか?」


独身男性と聞いて、彼女達の目の色が変わったことは見なかったことにしよう。


「敷島さんって、山瀬さんの事気に入ってますよね」


他愛のない会話の後、不意に八原さんがサラリと落とした言葉に私は息をのんだ。


何を言い出すの?そんな答えに困る事言わないでほしい。


慌てて「何言ってるんですかっ、」八原さんを軽く責めた。


「えー、」と残念そうな声音に被さるように、クスッと笑う声が聞こえた。


今の、敷島さん?


振り仰いだ先に、敷島さんの優しい眼差しがあった。


真っ直ぐに向けられているそれは、間違いなく私に向けられている。


思わず逸らしてしまいたくなるその真摯な眼差しに、胸が小さく鳴った。


「……そうだね。結構前から気に入ってる」


逸らしかけた視線は、その言葉に縫い取られるようにして固まった。


きゃあ、と2人の高い声がどこか遠くから聞こえるみたいだ。


「こ、こんな場所でそんなこと言われたら、揶揄われてるみたいに感じます」


可愛くないと自分でも分かっている。


隣でブーイングかます2人の声も無視して、敷島さんを軽く睨んだ。

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