Wednesday

第15話

「おはよう」


「……おはようございます」


出勤後すぐに自分のデスクで資料のテェックをしていた私は、コーヒーの香りと共に現れた彼を見上げた。


「はい、山瀬さんの」


コト、とデスクの隅に置かれたのはコーヒーの入ったカップ。


「あ、あの……」


限られた量の部長のコーヒーだ。


毎日飲むのは申し訳なくて、そろそろ遠慮しようと思っていたのに。


月曜日、敷島さんと一緒にコーヒーを飲んだ時間は確かに穏やかで、仕事への意欲が湧いた。


でも、そんな贅沢を毎日求めていたわけでもなくて。


翌日、彼が私のデスクにこうしてコーヒーを持ってきた時は驚いたけれど素直に受け取った。


けれど、今日もこうして持ってきてくれるなんて……。


どうしよう。


「山瀬さんは毎朝早く来て机周りを整えてくれるんだから、遠慮しないでいいと思うよ」


でも。


そんなつもりで早くに来ていたわけではないのだし。

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