6月 早梅雨
第20話
雨の日はキライだ。
あの日の、親友と一緒にいたあいつのことを思い出すから。
梅雨なんて、早く明ければいいのに。
今年は例年よりも早く梅雨入りしたと報道されて、この上なくがっかりしたのは、記憶に新しい。
さらに追い討ちをかけるように、梅雨がイヤなものであることを認識させるできごとが。
「ふふっ、ひかりちゃーん」
「はるちゃん……どうしたの?」
見たことないくらい、顔が緩んでるけど。
休憩していたわたしのあとを追うように、はるちゃんも休憩になったようで、スタッフルームに抜き足差し足でやってくる。彼女の緩んだその顔は、笑えるというよりも目を逸らしたくなる感じだった。
「朗報ですよ。今日もひかりちゃんと終わりの時間一緒だよって兄に伝えたら、迎えに来てくれるって。さっき傘忘れたって言ってたよね」
「えっ、ちょっと待って……」
「わたしはいないものだと思って、遠慮せずに兄とふたりでたくさん喋って帰ってね」
「今日、やっぱりラストまで残る……サビ残でいいから残る……」
「なに言ってるの。バイトリーダーがコンプライアンス違反なんていけません。示しがつかないよ、そもそもしちゃいけないことだし。とにかく一緒に帰ろうね〜」
なんだろう。なんていうか、わたしの立場、弱すぎじゃない?
はるちゃんにろくな反論もできず、休憩を終えて上がる時間までせっせと働く。それにしても、バイトをするようになってこんなに時間が過ぎないことを願ったのは初めてだ。だからせめて、勤務中はそれだけに集中しようと思った。
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