第19話
*
いざこざがあった翌日から、特に変わったことはなく日常が過ぎていく。
学年が違うから、そこまで頻繁に顔合わせすることはなかったけれど、すれ違うたび因縁つけられた。
ほかの(奴にとっては)先輩たちと比べると、わたしに対してだけ違う態度。
生意気すぎて、最初は過剰に反応してた。今思えば、わたしはあいつとのそのやりとりを気に入っていたんだろうな。不本意な話だけど。あいつも、わたしに気があるから、そういう態度で接してくるんだと思ってた。それなのに。
「……ひかり、聞いてほしいことがあるの」
「お、おう」
「わたし、真剣だからね! やっぱり、親友のひかりに一番最初に伝えたくて」
とある日の放課後、それは突然やってきた。
クラスの違う親友のともりが本当にまじめな表情でわたしに話しかけてくる。
「やけに改まってどうしたの」
「前に、すきなひとがいるって、ひかりに話したでしょ? 覚えてる?」
「もちろんだよ。名前も顔も教えてくれないんだもん、記憶に残るよ。親しい関係だとは思うけど、ほかの子に構ってる姿をよく見るから、恋人にはなれないかもしれないって言ってたよね」
「うん……でもね」
「え、付き合ったの?」
「そうなの。自分が受験生なのはわかってたんだけど、どうしても気持ちを止められなくて……玉砕覚悟で告白して」
そ、そんなにすきなの?
ともりをそこまで夢中にさせるのは、いったいどんなやつなんだ……
付き合ったことを報告してくれたものの、やはり彼氏の名前、顔は教えてくれることはなかった。
けれど、彼女がそんなふうにしてまでひた隠しにしてきた恋人の存在を、中学の卒業間近、わたしは見てしまった。
「え………」
ともりと一緒にいるあいつは……
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