夕日の帰り道
第9話
ありがとうございました、顧問の先生に挨拶をし、今日の部活が終わる。
片付けをして、昇降口へ行くと、あの人を含めた複数の男子がいた。
季節は初夏を迎えたあたりで、外は西日が照りつけるなか、あたしは、どきどきしながら彼のもとを通り過ぎる。彼は、ちょっと待って、と言ってあたしを引き止めた。
「鼻、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫で…」
大丈夫じゃないって。だから、俺、責任もって送って行くから、なんて言ってあたしの腕を引っ張ってしまう。友達と帰る予定だったのに、ということを彼に言うと、あいつらが弁解しといてくれるよ、と適当に返される。
それにしても、どうしてあたしを連れ出したりしたのだろうか。あたしは甚だ疑問で、彼にそのことを問うと、黙り込んでしまった。勢いづいて掴んでしまったのであろう、あたしの腕をぱっと離す。
「ご、ごめんね。急にこんなことされても、嫌だよね…」
「嫌っていうよりは…びっくりした」
「そっか。だけど、なんか、あのことを口実にするしかなくて…」
口実? あたしは彼に訊ねる。すると彼は口元を手の甲で押さえながら、きみといっしょに帰りたかったんだ、なんて言うもんだから、あたしまで顔が熱くなる。
この照りつけるような西日で、自分の赤くなってる顔が彼にバレないといいな、なんて思った。
夕日の帰り道
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いちおう、本編ファーストキスの続編的ななにか。
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