第16話

「今、つき合ってる彼ね、年上で、すっごい年上で、優しい人なんだ。今までつき合ってきた彼たちとは180度違う感じ。それでね、あたし、この人といっしょにいて、なんだか自分の知らないものを教えてくれる、彼とずっといっしょにいたいって、そう思ったんだ。真李亜さんとは、正反対になるのかな。気が合うものといっしょにいたいっておもうのと、気が合わないからこそ、いっしょにいたいって、おもうの。なんか、いままで生きてきた自分がつまらなく思えてさ。彼がいっしょなら、そのつまらなかった時間も、楽しかったものに、変えてくれるかなあって、そう、思ったんだよね」


なんだか、その彼氏さんのおかげで、菜月は大人になったみたい。ただでさえ見た目が大人っぽく、姉御肌だったのに、さらに磨きがかかったような、そんな感じ。こうやって、菜月が自分の胸の内を語ってくれるのは初めてのような気がして、あたしは、いいんじゃないかな、と言った。




「その人には、あたしは、会ったことがないから、なんとも言えないけどさ。菜月がそれだけ信頼してるなら、あたしは菜月は永遠就職したほうがいいような気がする」

「優莉藍…」

彼氏さん、ちゃんと紹介してよね、あたしの言葉に菜月は頷いた。菜月を見ていると、すきって、ただそれだけでも、いいんだなって、そう思った。まあ、すきっていうのが、結婚の最大条件だと、あたしは思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る