第9話

そんなやつ、死んでしまえばいいと思った。


だけど、そんな悲しそうな顔で話すから。


なんとなく、憎んでいた気持ちが、薄れていくじゃない…。









「…ま、よろしくな、依南」


「っ」



あのときとは違う、子供みたいな笑顔で君がこっちを見るから。


あたしを、名前で呼んだりするから。


あたしは不覚にも、ドキッとしてしまった。





そんなあたしに、彼は耳元で「近親相姦って、なんか萌えるな?」と囁いた。







前言撤回。


こんなやつ、早く死ねばいいんだ。





「…もっとも、あたし、あんたのこと好きだなんて一言も云ってない!」


「今云ったじゃん」


「今のはノーカウントに決まってるでしょ!」






(おわり)

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