動くことのない針

第18話

ピ―――――



彼が永遠の眠りについたと同時に、彼からもらった腕時計の針も動かなくなってしまった。


そして、私の時間も止まってしまったみたい。


すべてが止まって見えるの。


動いているとしても、それはまるでスローモーション。



こんなんじゃいけない、そう思って私は、私の時間は再び動き出した。


彼からもらった腕時計も動かさなくちゃ、そう、思ったのに。




電池を入れ替えても秒針もどこの針も動かない。






「これ…本当に電池交換しましたか?」



電池の入れ替えを頼んだ時計屋さんに問いただす。



「はい、やりましたよ。けれど動かないのでねー。不思議で」


「…これ、亡くなった彼からのプレゼントだったんです」


「…はぁ……」


「彼が永眠したのと同時にこの時計、動かなくなっちゃって…」


「………それはきっとその彼の願う思いが強いんじゃないんですかね?」


「願う、思い?」


「自分との時間をあなたが忘れさせないために、この時計に願いを込めたのではないか、と」


「…」


「まぁ、そんなこと実際にあったら変ですけどね」



時計屋さんはハハッと軽く笑って店の奥へ行ってしまった。




動くことのない針


(もし時計屋さんの言ってることが正しいのなら…私、一生この時計腕につけてるから)

空で私を見守ってくれてる彼に、心の中でそっと誓った。

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