あなただけが永遠
第1話
『好きだよ…』
『あたしも…カズが好きっ…』
学校の帰り道。
道端でイチャつくカップルを見かけた。
そうやって誰の目も気にしないで「好き」って言えることこそが、あたしは羨ましいと思う。
とあるグループは、「好きな人に勇気を出して素直になって、告白しよう!」っていう歌詞の歌ばかりを歌うのもある。
そんなこと。
したくてもできない人だって…中にはたくさん…いるんだよ……?
「……………ただいま」
あたしは誰にも気づかれないようにして、家の中に入り、自分の部屋へと行く。
「おかえり。今日は早かったんだね?」
あたしが部屋の中へ入ろうとしたとき、男の人が部屋から出てきてあたしに声をかける。
「……お兄ちゃん」
一番…会いたくなかったのに……
「どうしたの?そんな顔して。お前らしくないんじゃない?」
お兄ちゃんはあたしに近づいてきて、あたしの頭の上に手をポンッと乗せた。
ドクン。
「や、やめて…っ」
パシッ。
あたしはお兄ちゃんのその手を払う。
「どうしたんだよ。何か嫌なことでもあったの?」
俯くあたしを気にして、お兄ちゃんは顔を覗き込む。
「…なの」
「え?」
「お兄ちゃんのその優しさが…嫌、なの……っ」
あたしの瞳からはポロポロと涙が零れた。
「……そっか。それなら仕方ないよな。じゃあもう俺…お前のこと心配したりなんて…しないから…」
お兄ちゃんはそう言うと、自分の部屋へと入ってしまった。
パタン。
ドアが閉まる音と、お兄ちゃんのあの寂しそうな顔と背中が頭から離れない。
さっきよりも涙が止まらなくなる。
嫌だよ…
“もう心配したりしない”なんて言わないで…
あたしはお兄ちゃんが…好きなの…っ
世界でいちばん…誰よりもあなたを愛しているの…
でも…そんなこと…
―――言える筈がない。
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