第3話
「…5万で、どう?」
男はあたしの耳元でそう言う。
5万…
「あたしが、そんな安そうに見える?」
あたしの言葉に、男は「じゃあ10万でどう」と言ってきた。
10万…今までで一番多い額かもしれない。
「まぁ…いい…」
「ちょっと、そこのオッサン!」
「っ?!」
「この子俺の彼女なんですけどー、口説かないでもらえます?」
「なんだよ…彼氏いるなら話に乗ってくんなよ」
突然の男の登場に、10万をくれると言った男はいそいそとその場を離れてしまった。
あたしは、びっくりして、声のする方を向く。
そこには、スーツをビシッと決め、コートを羽織った、長身の男が立っていた。
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