10
深く深呼吸をして息を取り戻す。その様子を伺う飛魚さんは私をじっと見つめて手を目の前に差し出す。
「最後の仕上げだ!」
「ひんっ!!」
バシッと指で弾かれた額を覆う私に飛魚さんはケタケタと意地悪い笑みを見せる。
「いっったぁ…」
「もうすんじゃねぇぞ?」
それから頭を優しく撫でる飛魚さんに私は子供の様に頬を膨らませた。
「う~…飛魚さんのイジワル!」
「大人は大体意地悪だよ!」
飛魚さんの顔をチラリと見ると、優しい顔に戻っていた。その顔は好きじゃない。子供を見つめる父親の顔だから……。
「そんじゃあ、この話はこれぐらいにして……」
「飛魚さん」
立ち上がる飛魚さんの腕を引き止めると、飛魚さんは私を見下ろした。
「どうした?」
「…ねぇ、やっぱり駄目?娘としか見られない……?」
「……サヨリ」
「あんなキスまでしたのに……」
飛魚さんは何も言わなかった。
何か言ってよ……。
「悪いな…サヨリ」
最後の言葉を置き去りにして、飛魚さんは私から遠ざかる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます