最弱スキル【紙生成】で最上位ランク目指してます。

ぞーすい

1話

 『婆さんや。儂が死んだら部屋のタンスの中の封筒をコウちゃんにあげてくれ。そして光ちゃんにこう伝えてくれ。儂はいつでも光ちゃんのそばにおるから、そんなに悲しむんじゃないぞ。って。』

『わかりましたよ。信一郎さん。今までありがとうございました。』

『あぁ。それじゃあ行ってくるな。』

儂はそう言って目を閉じて、今までの人生を振り返る。


 小さい頃から折り紙が好きだった儂、栄川信一郎エガワシンイチロウは大人になって紙職人になった。

そこで色々な紙と出会い、それを求める様々な職業の人たちと出会った。

そしてその中の1人だった小説家の浅瀬恵美アサセエミと恋に落ち、結婚した。

老後は特に何かをするわけではなく暇な時間に折り紙をしていた。昔からやっていたから折れるものの種類は増えてネットで調べて折ったりもしていた。

そして今、97年というこの長い人生に終止符を打った。


 先に天国で恵美を待つ支度でもしておこうか、、、。


 目を開けるとそこには見慣れない空間が広がっていた。

「なんじゃ、ここは。」

そう言った途端、後ろから鐘のような金属音がなる。

「こんにちは、栄川信一郎さん。私は神です。混乱してるとこ申し訳ないのですがあなたに一つ頼みがあるのです。」

そう言うと、神は儂に一枚の紙を見せてきた。そこには衝撃的なことが書いてあった。

「この世界から紙が無くなる?」

「そうですね。紙職人はあなたがお亡くなりになられたことで1人もいなくなってしまいました。そして世界は今、非常に深刻な資源不足に陥っています。それを救うためには別次元からの資源の提供が必要になるのです。そこであなたに協力をお願いしようかと思いましてね。」


 神が言うには、この世界と別次元の世界を繋ぐには両方の世界に90年以上滞在する強いつながりを持つ人物同士がスキル【共存】とやらを使って繋ぐ必要があるらしい。

そして別次元の世界の15年がこの世界の1年と設定されているらしい。つまり儂が90歳の時に儂と1番強い繋がりを持つ恵美さんは96歳ということになる。


 この話は受けるべきなのだろう。実際のところ儂はこの世界から紙がなくなるのは嫌だし、何より恵美さんに不自由な生活送ってほしくない。


 なら答えは決まっているな。


 「わかった。その役、引き受けようと思う。詳しい説明をしてくれ。」

「ご協力感謝いたします。それでは早速説明に移りましょう。まずあなたが別次元の世界ですべきことは3つあります。」

そう言って神は詳しい説明をしてくれた。

1つ目。SSSランクになり、ギルド本部マスターになること。

2つ目。スキル【共存】を最高難易度のダンジョン、『re mond』をクリアして手に入れること。

3つ目。90歳になるまで死なないこと。

この3つが主な条件だった。

「あなたが最後の頼みなのです。どうかよろしくお願いします。」

「まかせろ。恵美さんが安定した生活を送れるよう本気出すからな。」


 そう言って儂は2度目の人生を歩むために再び目を閉じた。


 2度目の人生のスタートはどこかの部屋の中だった。

「ん?どこだここ。」

あぁ、そうか。儂は転生したのだ。

鏡を見てみるとそこにいたのはしわくちゃなおじいちゃんではなく、16歳くらいの青年が立っていた。この世界での儂の姿なのじゃろう。

この姿に合わせて、口調も変えるようにしようかの。

神から教えてもらったことを頼りにこの状況について確認していく。

まずは、ステータスか。

『ステータスオープン。』


【ステータス】

名前/シンジ・アレイグ  年齢/16歳  性別/男  LV/1

HP/1000  MP/10000  A/1000  D/1000

【装備】

革の防具 黒のローブ 黒の手袋 始まりのチョーカー

【スキル】

紙生成…紙を生成し操ることができる。紙の規模や構造によって消費MPが増減する。

【魔法】

なし

【スキルマップ】

『紙Lv1』←unlock

(生成Lv1)→(生成Lv2)[10]

(操作Lv1)→(操作Lv2)[15]

(MP増加+150)「40」

(深層構想獲得)→〔生成Lv2・操作Lv2・MP/11050〕[150]←lock

『紙Lv2』←lock 100

『紙Lv3』←lock 150

『紙Lv4』←lock 200

『紙Lv5』←lock 250


 とまぁ、なんとも言えないステータスだ。

前世の俺に近づけてくれたのだろう。

だけど…。

「MPに全振りしすぎでしょ。」

確かに【紙生成】はMPの消費量が他より多いらしいけど、別のステータスにも振って欲しかったものだ。

「それより、このスキルがどこまで使えるのか試してみないといけないな。」

そう思い、神から登録してもらった『マップ』機能を使って1番レベルの低いダンジョンに行くことにした。


 ダンジョンに入ろうとしたら、何やらガイドみたいな女性に止められた。

「ダンジョンに入るのなら冒険者証を見せてください。」

しまった。ダンジョンに入るには冒険者証がいるらしい。

サクッと作ってダンジョンに入ろう。

「それってどこで作ってもらえるんですか?」

「街の東の冒険者ギルドで冒険者登録をしたら作ってもらえますよ。一応紹介状書いておきますね。」

「ありがとうございます。」

紹介状を手に持って俺は冒険者ギルドに向かった。


 冒険者登録は意外にもすぐ終わった。ダンジョン前で紹介状を書いてくれた女性、アリス・シリエルさんのお姉さん、エリス・シリエルさんが冒険者ギルドに勤めていたらしく、とてもスムーズに登録をしてくれた。

だが問題は冒険者証を発行する時だ。スキルの確認が必要らしい。

スキル鑑定士が来るまで10分ぐらい待たされた。

そして言われた言葉は…。

「スキルは【紙生成】?見たこともないスキルですね。しかも能力はゴミです。」

その瞬間、周りから笑い声が上がった。

「おいガキ〜、そんなんじゃすぐ死ぬぞ〜。」

そんな言葉の後に続いて周りの人たちも「無能」だとか「ザコ」だとか言ってきた。

約90年も生きてきて対処法を熟知していた俺はそんな言葉を無視しながらエリスさんから冒険者証を受け取り、ダンジョンに向かった。冒険者証を受け取る時にエリスさんが「気にしないでいいからね。」と言ってくれたおかげで少しは救われた。


 そして今、俺の目の前にはゴブリンが5体います。

「さて、スキルの確認からだな。まずは何か紙を出すか。」

そう言いながら俺は折り紙を想像する。

すると、俺の手元に1枚の折り紙が出てくる。

「おぉ!すげぇ!ほんとに折り紙が出てきた!」

次は折り紙の鶴を想像してみる。

すると案の定、俺の手元には折り紙の鶴が出てきた。

「なるほど。折り紙1枚はMPを1消費して、鶴はMPを2消費するのか。んで、次は操作か。」

折り紙の鶴がゴブリンに突撃するのを想像する。

その瞬間、さっき出した鶴がゴブリンの体を突き破り爆発した。さっきまでゴブリンがいた場所には革袋が1つ置いてあった。おそらく中に素材や魔石が入っているのだろう。

『確認。シンジの技に【鶴舞】を追加。ゴブリン撃破。1ポイント獲得。』

そう言って俺の隣に1匹のマシュマロが出てくる。

これが事前に神から聞いていた【システム管理型ロボット】か。

「ステータス管理はお前に任せるとして、後ゴブリンは4体か。」

実際のところステータス管理を任せたのはめんどくさいからである。

後で色々と質問しておこう。

そう考えながら俺は【鶴舞】で残りのゴブリンも倒した。

これで魔石は5個。レベルは2になってステータスも少しだけ上昇した。

少し休憩しながら技の【鶴舞】を確認する。


【鶴舞】…対象1体に突撃し、小規模の爆発を起こす。


 強そうで少し微妙な技をゲットした。これ乱射できたら強いなぁ。

そんな緩いことを考えていると後ろから気配がする。見るとそこにはこのエリアのボス、オークがいた。


 なんかボスとの遭遇早くない?

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