「 詩集売りの彼女 」(現代ドラマ掌編)

〈 ともに漂流し出あった僕たちが、すれ違いざまに交わしたもの 〉


 僕は音楽をやるために、11年ほど首都圏にいたのですが、そのころにあった出来事です。


 自分の書いた詩がなかなか世に出せなくて悩んでいたころで、僕は同情心をおぼえたんでしょうね。


 駅員に見つかったら、間違いなくつまみ出されるところで、彼女は柱を背にして座り込んでいました。

 僕も路上でギター抱えて歌っていたら警官らに囲まれて、中止を求められたことがあるので内心ひやひやしてもいたと思います。


 彼女が、彼女なりに報われて、道が開けていたらいいな。

  

 もうずいぶん前のことですが、今でもそう願っています。



20241019


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