セカンドファンタジー【外伝2】

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 ギルバートは、また宿舎から抜け出して街へ出た。ギルバートは今、王都にいた。王都には自分の部屋がある。前線ではテントか野宿なので、王都にいられる時は幸せだと言えるだろう。平和な証拠だ。


 だが、ギルバートの心は晴れない。ギルバートには想い人がいる。直属の上司の女性、フビジだ。ギルバートは花が好きで、花言葉も知っている。ギルバートは、よくフビジに花束を渡していた。ちゃんと、花言葉を考えて。


 しかし、フビジは、


「ありがとう。ギルバートは本当に花が好きなんだなぁ」


と言って受け取る。花言葉なんか興味が無いらしい。流石にギルバートも悩む。フビジの素顔は知らない。いつも鼻まで隠れる仮面をつけているからだ。噂では、醜いこぶが額にあるらしい。それでも、ギルバートはフビジに惹かれていた。


 ギルバートには危機感があった。フビジは今は千人長、ギルバートは副長の300人長。だが、フビジはこれからもっと出世するだろう。将軍としての器量と頭脳と武力を既に備えている。いつまでもギルバートが副長というわけにはいかないだろう。副長でなくなれば、フビジから離れてしまう。


 いっそのこと、フビジのことを諦めようか? と思いながら、ギルバートはまた花屋に行くのだった。服は私服だが、剣は身に付けている。



「なあ、いいじゃねえか、少しくらい」

「酒の一杯くらい付き合えよ」

「そんな……困ります……」


 花屋の看板娘のフレデリカが酔っ払いのチンピラ4人組に絡まれていた。チンピラ達も剣を身に付けていた。


「フレデリカちゃん、どうしたの?」

「なんだ? お前」

「俺達の邪魔するのか?」

「この優男、生意気に剣を持ってるぜ」

「やっちまおうぜ」


 4人組が一斉にギルバートに斬りかかった。ギルバートはこれでも300人長、まともに剣術を習ったことも無い4人など、相手にならなかった。峰打ちで倒された4人が慌てて逃げていく。


「怖かった? 大丈夫?」

「はい、もう大丈夫です」

「花を買いに来たんだけど、今日は赤い薔薇にするよ」

「じゃあ、私から、あなたに」



 フレデリカは、恥ずかしそうにギルバートにカーネーションを渡した。赤い薔薇の花言葉は『愛の告白』、カーネーションの花言葉は『無垢で深い愛』だった。







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セカンドファンタジー【外伝2】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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