「如何にして、宇宙店主のチャクラが開眼したか?」

 これは、宇宙店主が宇宙店主幼児からの宇宙店主少年だった時代のハナシ。


 当時の宇宙店主の生家には、様様な地球人業者の訪問販売の行き来が在った。

 コレは決して、生家が裕福で在ったとか、母地球人親のマリコが出不精にて、買い物に出掛ける手間を省いて居たとかでは無い。


「田舎特有の名産物、御近所付き合い。個地球人商店救済の助け合いを指す。」


 宇宙店主幼児からの宇宙店主少年。

 当時は全く理解出来なかったし、そんなシガラミが嫌だった僕タン。今地球現在となっては、非常に素晴らしい相互扶助の地球人文化を、当時の僻地に住む地球人達は持っていたのだ。と感嘆。


 コンナ宇宙店主家の出入り地球人業者の中に、靴屋さんも居た。

 物心付いた頃から、宇宙店主幼児からの宇宙店主少年。常に足下のお洒落は、この靴屋さんの持ち込む靴の選択によって決まって居た。

 一番想い出に残って居る靴は『月星。』豪雪地帯に生まれ、屋根に蓄積した雪の重みで、木製のガラガラ玄関の引き戸が開かなかったり、軒先に垂れた闘牛の逞しい氷柱が、運良く其処を歩く、糞ジジイ糞ババアの脳天を直撃して即死したり。早い話が「間引き」ね。


「オット。」

 安定感超抜群!大定番の宇宙店主名物『語りのレコード針 脱線飛び。』

「この宇宙店主がお伝えしたかった事は、底にスパイクが付いて居たスノーブーツを当時、発売して居た『月星。』。雪そのモノは、反吐が出る位に嫌いだったのだが、スパイクのスノーブーツを早く履きたくて、冬が待ち遠しかった宇宙店主幼児からの宇宙店主少年。」

 これだけデスね。



 ソンナ靴屋のオヂサンは、視力がチト悪い地球人達にとっても、非常に見た目にも分かり易い、頭部の天辺から両耳に掛けての『ツルッ禿げ。』

「すまない、チト又レコード針が、『如何にして、宇宙店主のチャクラが開眼したか?』ドーナツ盤から飛んで、脱線してしまった様だ。」


 普段の販売件配達の時は、この『頭部の天辺から両耳に掛けてツルッ禿げのオヂサン。』が、主に宇宙店主宅に訪問して居たが、たまにソノ『頭部の天辺から両耳に掛けてツルッ禿げのオヂサン。』の息子さんが、代理販売で来た居た事もシバシバ。因みに此方の『頭部の天辺から両耳に掛けてツルッ禿げのオヂサン。』の名誉の為に忠告しておくが、『頭部の天辺から両耳に掛けてツルッ禿げのオヂサン。』は、とってもトッテモ良いヒトだった。

「本当に。」

 人間の醜い内面を見る事に余念が無いマリコ。そんなマリコをも腰砕けにした程、超善人の『頭部の天辺から両耳に掛けてツルッ禿げのオヂサン。』

 お互いに戴き物のお裾分けをしたり、山菜採りが趣味のマリコ。採って来たばかりの山菜を差し入れしてあげたり。

 だから、コチラの『ツルオヂ。』( 略 ) の息子さんも、きっと地球人間性が良いに違いない。


「ハイ。大正解。」


『宇宙から幼少。』( 略 ) の母親地球人マリコの超大好物だった、その超好地球青年の靴屋のお兄さん。

『宇宙から幼少。』もマリコと同じく。

 とても礼儀正しく、常にニコニコ穏やか。嫌ァァな要素や、不快な立ち居振る舞い、計算尽くしの裏表などは皆無。と断言しても良い程の、若き地球人格者だった靴屋のお兄さん。稀に『ツルオヂ。』と一緒に家にやって来ては、仲良く親子で「イチャイチャ」触れ合いながら、マリコと三位一体「キャッキャ!キャッキャ!」和気藹々、平和的な商談をしたり。僕タンにも、商売っ気抜きにして、色々と話し掛けてくれたり。『ツルオヂ。』は、本当に自身の息子が自慢だったに違いない。


 それから暫くして、我が家にやって来るのは『ツルオヂ。』の場合が、チト継続的に続いた。お兄さんが中々やって来ないマリコ。オンナの厭らしい部分が「ニョキニョキ」と、全身部の毛穴から溢れ出して来て、もうソノ衝動を抑える事が出来なくなって居たマリコ。

( 嗚呼、もぅ我慢でぎねッ!)


「あのぉ.. 何だが最近、おたぐのお兄さん。全然顔見ねぇケド、なしたんだべ?って思ってや。元気だすべが?」

 マリコは只、お兄さんの近況報告を『ツルオヂ。』から聞きたかっただけなのだが、マリコの問いに対して、明らかに『ツルオヂ。』の表情が変わり、その現場に居た『宇宙から幼少。』も肌で感じた、然りげ無い空間の『気』の変化。五秒間程?の無音の風が玄関先を通し過ぎた後、『ツルオヂ。』の口から出て来た答えは、意外な内容だった。



「.. アア.. 亡ぐなってしまったんだす..。」

 この台詞を聞いたマリコは、間髪入れずに泣きだして、然程の時間も掛からず、号泣し始めた。この二人の遣り取りを見て居た『宇宙から幼少。』は哀しいかな、既にソノ時点には、『死生観』に付いて「ブツブツ..」と独りぼっち、自問自答を呟く段階の階段を上って居たので、正直に告白すると「哀しみは全く無かった。」


「ア.. ちょっと待ってでね。」

 玄関先に立ち尽くす『ツルオヂ。』に一言掛けたマリコは、「グジュグジュ」と鼻を鳴らしながら、自身の寝室に掛けて行った。そして戻って来たマリコが手にしたモノは、純白色の紙封筒。

 さっきまで正座して座って居た床に戻って来て、

「あのぉ、コレすぐないけど.. うげ取って下さい..」

『ツルオヂ。』に手渡した。現金に違いない。香典代わりなのだろう。一万円二万円どころの額ではナイ筈だ。だってマリコ、お兄さんのコト大好きだったもん。もっとだろう。この家にソンナ大金が在った事実に、『宇宙から幼少。』も驚いた。

 申し訳無さそうに、その紙封筒を貰った『ツルオヂ。』。彼の顔を見ると、明らかに何かの感情を「グっ」と堪えて居るのが、『宇宙から幼少。』には分かった。

 号泣から徐々に気持ちが落ち着きつつ在るマリコ。しかし「シクシク」と泣き続けて居た。

「二ヶ月位前に、亡ぐなってしまったんだす。」

『ツルオヂ。』がマリコに教えてくれた。死因は教えてくれなかった気がする。



 それから幾ばくかの短い時間が玄関先で過ぎて、マリコと『宇宙から幼少。』は、『ツルオヂ。』から何足かの靴を購入して、『ツルオヂ。』は深くアタマを下げて帰って行った。恐らく『ツルオヂ。』は、嘗ては二人で共有して居た社用車の『ハイエース』の、それまた生前の息子も握って居た冷たいハンドルを運転しながら、自身の息子の事を改めて想って居るに違いない。

 そう考えてしまうと、『宇宙から幼少。』も初めて玄関先で、とても哀しくなった。

 そしてコノ瞬間、『宇宙から幼少。』の深層世界の中に、一つの『真理』が生まれた。


 本当の哀しみとは、自分とは全く関係の無い有形無形の者達が味わっている哀しみ。それを共に分かち合い芽生える感情が、本当の哀しみ。



「びっくりしたのが、この真理のヒントを宇宙店主に教えてくれた相手が、身近な存在の母親マリコだったと云う事だ。」

 明日辺り、マリコ墓参りにも行ってやっかな?

 生きてるけど。

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