19.太陽の痣。

「ルカ、今日はどこで食べよっか?」


優しい緑の髪とハチミツのようなとろりとした金色の瞳の少年が尋ねる。


「今日は食堂の裏にある小さいお庭でお昼にしよう?あそこ隠れ家みたいで好きなの!」


「ふふふ、僕も好きー!」


それに別の子も賛同してくれる。


他にも数人いる友人たちと笑い合ってルイスが持ってきてくれたお昼ご飯を学園の食堂の裏庭で食べた。








僕は12歳になった。あの事件から6年が経ち、その間に学園へ通うことになった。


ゼインが言ってたように7歳で僕に家庭教師がつき、魔法に関しては、あのおじいちゃん先生がついてくれることになった。名をアダムスと言うらしい。

10歳の時は学園に行くために友人として、侯爵家、伯爵家

から3人の友人候補が紹介された。今ではみな仲良しの親友である。


一人目は、僕たちのまとめ役のような子、エドワード・ファリス。侯爵家の三男で、明るめの緑の髪に濃い金色の瞳の少年。


二人目は、活発で友達想いのライト・ハーヴィー。伯爵家次男で、赤髪にルビーの瞳の少しガタイの良い子。


そして三人目は、三日月の痣がある、おっとりとした優しい子、ミラ・トイルズ。伯爵家四男の深い海のような青色の髪にグレーの瞳の華奢な子だ。


みんな優しくて、仲間想いの良い子たち。その3人が僕の友人だった。


学園ではいろんなことを学ぶ。魔法、薬学、武術など。僕たちは今12歳なので、初等科に在籍していた。10歳から13歳は初等科、13歳から16歳は高等科と別れていて、高等科からはさらに魔法科と騎士科に別れていた。


「みんなはどーするー?」


「何が?」


「どっちの科に行くんだよぉ」


「うーん…僕はねぇ、騎士科かなぁ。」


「まあお前三男だからなー、自分で金稼がなきゃだもんな」


「もう決まってるの?凄いね!」


「ね!凄いね!」


「ルカとミラは華奢だし騎士には向いてないんじゃないか?特にルカは第2王子の婚約者だろ?」


「うん、そうだね、必然的にそうなるよ」


「いいなぁ…僕も早く太陽の痣がある人と出会いたいや…」


ミラは三日月の痣があるので、対になるのは太陽。両親がこの国の人全員を調べてくれたらしいけど、既に別の三日月が運命だった人と、もうおじいちゃんで運命には先に旅立たれた人だったりと同じ太陽の痣でも運命の人はちがかったらしい。こうなれば平民か他の国にいるのではないかと言われている。


そして僕はいいことを思いついた。


「ねえねえミラ!あのね?隣国にお兄様が今魔導騎士団の遠征で派遣されてるんだけどね?お兄様に調べてもらうのはどうかなぁ!」


お兄様は昨年学園を卒業して、魔導騎士団へ就職した。公爵家嫡男として当主の勉強もしているのに、仕事も難なくできるお兄様はやはり素晴らしい。そのお兄様が先週隣国へ、副団長である母様と共に魔物の討伐へと向かった。だが内容はそこまで危なくないらしく、討伐は現地の騎士団が、魔導騎士団はその後片付けみたいなものだという。今は人手が足りてないから隣国のこちらへ手伝いを要請したとのことだった。

そしてお兄様は何かあれば連絡をちょうだいと、それ用の魔導具を僕にくれたのだ!


「で、でも…迷惑でしょ…?お仕事で行ってるのに弟の友人ごときが頼んでいいことじゃないと思う…」


ミラは痣が発現した故に両親から過保護にされ、対の痣を持った者を探し回っていたことから、

自分のために何かされる=相手の迷惑になる

と捉えてしまっているらしい。


「あのね?お兄様は、『何かあれば連絡をちょうだい』って言ってたの。お兄様は僕の為ならなんだって喜んでしてくれるし、なんなら泥水だって啜ってくれるよ?だからね、これは僕の独り言になるのだけれど。『僕の大好きな親友が困ってるのに何もできないのが辛いの』そう言えばお兄様は僕を助けようとして痣持ちの人を探してくれるよ。」


そう言うとミラは目を見開いて固まり、ライトとエドはヒソヒソと顔を近づけて何か喋っている。仲が良さそうで何より。


「初めて会った時は純粋で世の中の汚れなんて知らねぇお坊ちゃまだと思ってたが…少しずる賢くなったか…?」


「ずる賢いのではなくて、友人のためなら何でもできる優しい子。何も変わってない、ずっと可愛らしいままだよ。」


「うわぁ…お前…目曇ってんじゃねぇの…?」


「失礼だね」


ミラは意識が戻ってきたのか、少し困ったようで、でも期待もある表情で「じゃあ…迷惑にならないように…お願いしてもいい?」もじもじさせながらそういう姿は我が友人ながら可愛いと思った。














「それでね…お兄様…ミラが困ってるのに僕何もできないの…。この国にはいないみたいだし…。ねぇお兄様、僕どうしたらいいの…?このままミラが相手を待ち続けるのは嫌だよ…。」


家に帰った僕は早速お兄様と連絡を取り始めた。丁度休憩時間だったみたいで、その間ずっと僕の声を聞きたいよ~と言ってくれたからミラのこととか学園で習った事を話そうと思う。


『そうか…まだ12歳だから時間はあるけど、四男ともなれば婚約者はそろそろいなければいけない頃か…。よしわかった。お兄様の方で調べておいてあげる。だから元気を出して?いつもみたいに元気な声をお兄様に聞かせて?』


やったあ!これでもしかしたらミラの運命の人が見つかるかも!


「ふふ、お兄様ありがとう!だぁいすき!」


『んんんっ!!わ……私も大好き……♡』


お兄様いつまでも僕のこと大好きなんだなぁ…。


それからたくさんお互いのことを話して、母様は副団長だから何かの会議に出ているらしいけど、母様の活躍も教えてもらって時間ギリギリまで喋り尽くした。


「じゃあお兄様、早く帰ってきてね?母様にも、ルカが待ってるよってこと、伝えてね?」


『うん、わかったよ。父上にもよろしく言っておいてくれ。それじゃあ暖かくして寝るんだぞ?おやすみ。』


「はぁい、おやすみなさい、お兄様。」


その後父様が帰宅して、二人きりで夕食を食べる。お兄様から聞いた母様の話をしてあげると、アレクはすごいなぁ、可愛いなぁ、と終始デレッデレだった。いつもはもう少しマシなので父様には母様が足りてないのかもしれない。


そして僕も。


「学園が忙しいから最近は手紙だけのやり取りだ…。会いたいのに。」


学園に入れば以前のような3日に1度王宮へ、とはいけなくなった。朝から夕方まで授業があり、帰る頃にはもう夕飯時。週末も1日は家庭教師と復習しなければならないから、結局週に一度しかゼインに会えない。


「さみしい…」














「私も寂しいな…ルカ。」


手に持っている小型の魔道具からルカの声が聞こえる。あの子は私がこんな物を持っているなんて知らないだろう。


「殿下って巷で噂のヤンデレってやつですか?」


「ロバート、お前その口縫い付けてやろうか。裁縫は不得意だが心を込めて縫ってやろう。」


そんな軽口を交わすが…私だって本当に寂しいんだよ、それこそこうやってルカの部屋に盗聴用の魔道具を仕掛けるほどにはね。あの家族は気づいているだろうが…見逃してくれているらしい。











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