18.ことのてんまつ。
~モブSide~
本日ノルン侯爵とフォレスト子爵、それに加担した者共が処刑される。
なぜなら第2王子の婚約者であり、公爵家次男のルカリオン・アーバスノット様を誘拐し、暴行、強姦未遂まで悪行の限りを尽くそうとしたからである。ノルン侯爵は以前から黒い噂が出入りしていたためあまり驚かないが、魔道具の天才だと謳われるセオドア・フォレスト子爵に関しては驚かざるを得なかった。
なんでも彼の従兄弟はルカリオン様の母君であるらしく、彼もまた夫婦共に天才であると言われている。
子爵はその母君を長年恋い慕っていたそうだが、彼と対になる痣が自分には無かったから諦めていたそうだ。
だが魔法の万能さに魅了され、自分も対になる痣ができれば恋人となれるのでは、そう思って研究したらしい。
その副産物である魔道具たちは使い道を思いつけず倉庫行き。それでも彼と恋仲になる夢を見て日々精進していた。だがしかし、対の痣を持つ者と出会ってしまった。それが王弟。
そして自分が彼の運命だったはずなのに浮気をしたと逆恨みして、長い時間をかけて彼らを貶める方法を考えたようだった。
子供が生まれたらしいから子供を攫おう→匿名で人を雇うも結界魔法のついた魔道具があり断念。
次の子供ができたようだ→噂のあるノルン侯爵と、おそらくまた魔道具が付けられているだろうし、それを外してもいいがもし外した時に何かあれば怖いので、無効化する魔道具を作って攫う時に使ってもらおう。
子供を盾に脅せば彼も自分の愛に気づくかもしれない…!こういう流れで誘拐事件は起こったそうだった。
ノルン侯爵は何かを喚きながら断頭台へと押されて行くが、子爵は不気味な程に穏やかな表情でさっさと歩いていった。そして最後に
「アレキサンダー、私は貴方を愛している!だが決して私以外の者にうつつを抜かした貴方を許さない!」
あまりにも哀れで、悍ましく、自分勝手な最期だったと皆が話していた。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
「正直、あれだけの処罰では私の半身に手を出した罪は拭えないよ。もっと一生かけて人々に踏み躙られながら己の罪を後悔すればよかったのに…。」
「殿下、その顔をルカ様に見られたらどう言い訳するんです。」
ギリ、と歯を食いしばり悔しさに顔を染める彼をルカ様が見れば短い御御足を一生懸命動かして逃げ出すだろう。
「今日はルカは来ない日だからね。………はあぁ…会いたい………。2ヶ月も毎日一緒にいたんだ。おはようからおやすみまでずっと。また会える頻度が少なくなってしまった……。早く結婚したい………。」
「最近そればっかりですよね」
「お前最近煩いぞ」
「すみません、我が主がルカ様に出会ってから面白くて」
「お前にも痣があればわかる話さ、私は痣がなくともあの子を愛していたけれどね」
「熱烈ですね」
「ルカ……?」
コンコンとノックの音がして僕の部屋に入ってきたのはお兄様だった。
「お兄様?どうしましたか?」
お兄様は少し言いにくそうにもじもじさせて、
「ルカは思い出したくないのではないかと思ったのだけど、母様たちは帰ったらしっかり説明するから軽く、と言われててね。」
何のことだろう…そう思いつつも神妙な表情で兄は語った。
「ルカを攫った奴が、今日の午前処刑されたよ。それに加担したやつもね。」
「そう、ですか……。」
自分でも驚くほどあっさりとしていた。顔はうっすらと覚えてるけど、多分あのぽっちゃりしたおじさんかなぁ…と。全力で家族とゼインが癒してくれたのもあるし、なにせ当時のほとんどの記憶が欠如しているのだ。殴られた痛みと幻聴くらいしか覚えていない。
「それからね、母様のストーカーをしてた貴族も消えたんだよ。」
母様ストーカーいたんですか!まああれだけ美しい人なので仕方ない…か?
「母様も一安心ですね!」
「ふふっ、そうだね!」
「母様~父様~!今日は早く仕事が終わったんですね!おかえりなさい!」
「父上、母上、おかえりなさい。」
「ただいま~二人共!元気だったかい?父様たちは少々疲れてしまったよ…、でも可愛い天使たちを見たら癒されてしまった!」
父様は僕と兄様をぎゅーぎゅーと抱きしめてほっぺにちゅっちゅっとキスをする。
「ふふ、ただいま、二人共。僕たちは着替えたら夕食に向かうから、今日はみんなで一緒に食べよう。その後に父様の執務室に行きなさい。」
多分今日の処刑の話だろう。僕たちは食堂に向かって両親を待ち、皆で夕食を食べた。久しぶりに家族四人揃ってする食事はとても楽しかったけれど、ここにゼインがいないことに少し寂しさを感じる。
「父上、母上、ジークフリードとルカリオンがやってまいりました。」
お兄様と手を繋いで執務室へ行くと、父様たちがお茶を用意して待っててくれた。ソファに促されて座ると、父様が話し始める。
「よく来たね、二人共。もうルカに説明はしたと思うけれど、誘拐事件の犯人共が今日処刑されたよ。」
それからなぜそんな事が起こったのかという説明があり、主犯の動機は母様への恋慕と復讐だった、というのがわかった。僕を攫った侯爵に関しては、長年僕のような子供を甚振っていたようで、専属の人が誘拐、暴行を行っていたそう。
もうこれで終わりなんだ。
やっと心から安心できたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます