7.おうじさま。

何故我が家に第二王子がいるのかーーー。


それは一月前まで遡る。






~ゼインSide~





「ケイジス、ゼイン、よく来たね」


父王が執務室へ私達を招いたのは私の従兄弟のお披露目会の1月程前だった。


「どうなさいましたか、父上。」


「いやね?うちの弟の息子がこの前3歳になったでしょ?そのお披露目会が来月開かれるんだけど、もちろん私達も招かれるから、それを知らせるためにね。」


王弟の息子か…確か5年前にもあそこの長男のお披露目会があった。そこの次男か…時が流れるのは早いな。


「そうでしたか。分かりました。ありがとうございます。では。」


兄上は父王の話が終わるとさっさと執務室を出ていく。私も追いかけて部屋を出ようとすると、父王に呼び止められた。


「ゼイン、少し待ちなさい。お前に伝えなければならぬことがある。」


普段の父からは感じられぬほど真剣な瞳で話しかけてきた。


「なんでしょうか。」


「その子…ルカリオンくんはね、腰の左上に痣があるそうだよ。それも花の形をした、ね?」


何だと…?花の痣…?稀にこの国の人には、痣を持って生まれる人が年に1人か2人いる。それもただの痣ではなく、三日月型の痣を持つものが生まれたならば、太陽の形をした痣を持つものが生まれ、犬の痣ならば猫の痣。そして花は、その花の茎と葉の部分が痣となって、対の模様が出てくるのだ。対の形を持って生まれた者は出会った瞬間に分かると言う。魂が求めるのだと。そして私は薔薇の茎の痣が腰の右上にあった。何かを囲い込むような檻の形をした棘がぐるりと円を描いているのだ。


「父上、その子の花の種類は」


父王は満面の笑みで伝えた。


「薔薇の花だよ」









✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿








そしてお披露目会当日。壇上にとてとてと歩く姿に皆悶えて蹲っているが、私は一瞬も目を離すまいとじっとその子を見つめた。


この子だ。私が求めていたのは、この愛らしい天使なのだ。やっと見つけた、私の愛しい薔薇。


そのあとにお互いを紹介し、やはり可愛いと確信しながら、父達は上手いこと私達を2人にさせてくれたので、立食スペースにルカリオン…ルカを連れてきた。


せっせと食べ物を口に運ぶと雛鳥のように警戒心もなく口を開ける。小さくて赤い舌がチロチロと見える様は官能的でこの興奮を隠すのに必死だった。


するとお腹がいっぱいになったようで、立ったまま船を漕ぐというなんとも器用な真似をし始めた。ここは虫が多い。この子の眠りの妨げになるだろう。父王へアイコンタクトを取り、休憩室へルカを運んだ。まだ会って間もないというのに、この子も私を唯一無二とわかっているのだろうか、全てを委ねて眠るのを見ていると、愛しいという思いが溢れ出て思わず額に口づけをしてしまった。するとどうだろうか。ふにゃっとルカが眠りながらも微笑んだのだ。


「必ず私のものにするよ…ルカ…愛しい私の半身…」


そう呟くと、ノックの音が聞こえてきた。


『ゼイン殿下。私はルカ様の侍従のルイスです。ルカ様をお部屋に運ばせて頂きたく存じます。』


あぁ…もう少し君の寝顔を見ていたいのに…。


「わかったよ。でも運ぶのは私にやらせてほしいな?」


そう言って部屋からルカを抱きかかえて侍従に案内させながらルカを寝室へ運んだ。


「さて。侍従くん。父王から許可は得ているし、おそらく当主からも許可が出てるはずだ。私は今日ここに泊まっていくよ。」


対の痣を持つ者同士を引き裂くのはたとえ親でもよろしくないという考えのある国だ。父はルカが痣を持って生まれたと知った時から私の婚約者にするようだったし、その話は当主にも伝わっているはず。特に会ったばかりの私達なので、2,3日はここに滞在できると思う。


「ええ。旦那様からはすでにそのように、とのことでしたので、お部屋に案内させていただきます。」










「おはようございます。クリス殿、アレク殿、ジークくん。挨拶が遅れましたが本日から数日間よろしくお願いしますね。」


「ああ。こちらもルカを頼むよ。あの子は少し特殊な子だ。痣を抜きにしてもね。」


「ゼイン殿下、くれぐれも、僕の可愛い子を泣かせないようにしてくださいね?」


クリス殿とアレク殿からしっかりと釘を差され、朝食の席につく。すると私がいるとは知らなかったのだろう、寝起きのふにゃん、とした私の可愛い半身が驚きながら部屋に入ってきた。











本当にかわいい。







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