4.おしゃべり。

「あぅー、あぅああ~」


だいぶおしゃべりできるようになったぞ!


今日から母は職場に復帰するようで、朝から家にいなかった。母を驚かせたい一心で僕は喋る練習をしていたのだ。


「おや、ルカリオン様はもうお喋りできるようになったのですねぇ、奥様も旦那様もジークフリード様もお喜びになられますよぅ!」


僕の乳母の男性…カイルは、息子二人を持つ母親らしいが、二人共すでに独り立ちしているらしく、公爵家で乳母を募集していることからここへ来たそうだった。優しそうな双眸をしたオジサマで、僕のオムツ替えや、ミルク、あやし方もとても満足するものだった。


「あう!だっ!」


「ふふ、僕の息子を思い出します~、ルカリオン様みたいにとても可愛くてお喋り上手な子達だったんですよ!」


おしゃべりじょうず!へへ、うれしい!かあさまやとおさま、おにいさまをよべるように、もっとれんしゅうしなくちゃ!


そんな感じでやる気も上がり、どんどん月日が経っていた。







✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿





「ルカ~、お兄様だよ、今日も可愛いね!」


おにいさま!!おにいさまだ!あえてうれしい!


「あぅあ~、いぃー、いたま、いーたぁ~、いたま!」


んむ~まだまだだ…いたま、ってなんだよぅ…


「るっ、るっ、るか!!!」


「ぴぇっ?!ふ、ふ、ふぅわぁぁぁああん!!!」


おおきなこえ。やっぱりぼくおこられちゃうんだ、ぼく、どうしておこらせちゃうんだろう…


「あぁっ、ルカ、ごめんねっ、怒ったんじゃないよ、驚かせたいわけじゃなかったのに…!泣かないで、ごめんね、ルカ!」


おこったんじゃないの…?ほんとに…?


するとバタンッと扉が開き、父と母が大慌てでやってきた。


「「ルカリオン?!どうした!!」」


「母上、父上、私がルカを驚かせて泣かせてしまいました…!申し訳ありません!」


おにいさまがわるいんじゃないのに、ぼくがないたせいでかあさまたちにあやまらなくちゃいけないの…?


「どうしておどろかせちゃったの?」


そう母は穏やかに尋ねた。


「ルカが、『いたま』と呼んでくれたのが嬉しかったのです…それで驚いてルカの名前を大声で呼んでしまって…兄上失格です、ごめんなさい…」


「おやおや、まあ、ルカが喋ったの?!ルカリオン~母様と言ってみて!」


「ぐすっ…~たまっ、あたまっ、か~ま、かたまっ!」


涙を父に拭われながら練習の成果を見せる。


「…………クリス、どうやらこの子は天才みたいだ。ジークも天才ではあるが!この子も天才だとは!!」


「ルカリオン、父様と言えるかい?と・う・さ・ま!」


「とたま!いたま、かたま、とたまぁ!!」


「「「天才だ…!」」」


















「この子を嫁にやるのが惜しい。」


「父上、いい考えがありますよ!」


「ほう、なんだね。」


「私の嫁にするのです!」


「いい考えだ!!そうしようじゃないか!!」


「兄弟で結婚はできないよ、二人共。」


「「そんなぁ~…」」












末っ子のことになるとポンコツになる父と兄。











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