第7話

あつーい…。


日焼けしちゃう…。


というか、事前に言っといてよー…!




数時間前…――。


「うっひょー!着いたぜ、グアムに!!」


「暑いなぁ…。早く海に入りたい…!」


するとおじさんが、真面目な顔つきをして言った。


「宇宙たち。海に行く前に、言っておかなくてはならないことがあるんだ」


「何ですか?」


「今年の夏の旅行は、私たちだけではない」


「…え?」


「同じ飛行機に乗っていたはずだから、もうすぐ来るだろう」


ど、どういうこと?


すると空港側から、


「海さん!」


聞き覚えのある声がした。


この声は…、


聖雲しょうさん!」


振り返ると、笑顔で聖︎︎雲さんがこちらに向かってきた。


何か、輝いてるなぁ。


「海さん。お久しぶりです!」


「お久しぶりです」


「お会いできて嬉しいです!」


優しく微笑む笑顔に少しドキッとする。


「わ、私もお会いできて嬉しいです」


聖雲さんも一緒だなんて緊張しちゃうな…。


そして、花宮組との5日間のグアム旅行が始まった。




時は戻り今、私たちはビーチにいる。


「海!海に入りに行こ!」


「うん」


「海さん!」


しょ……さん…」


ちょ、直視できない…。


「どうしましたか?」


「あ、いえ、なんでもないです」


「…そうですか。じゃ、海に入りに行きましょう」


「は、はい」


な、な、な、何あの体…!


ガッシリしすぎでしょ。


鍛えてるのかな?




「海。はい、浮き輪」


「あっ、ありがとう、晴」


今気づいたけど、胸のモヤモヤに関係してる人が全員ここにいる…。


…まあいっか。


何か分かるかもしれないし。


そう思いながらプカプカ浮いていると、晴たちがボールでワイワイ遊び始めた。


…あれ。


聖雲さんは1人でいる…。


3人の中に入りずらいんだろうなぁ…。


ほとんど初対面だし、仕方ないよね。


「聖雲さん!」


「は、はい。どうしましたか?」


「あっ、いえ。特に何もないんですけど…。…えっと、聖雲さんと話したくて…」


「そ、そうなんですか」


「…聖雲さんは、青葉組もいることいつ知ったんですか?」


「夏休み前から知ってましたよ」


「そうなんですか?!私たち、空港前で聖雲さんを見た時に知ったんですよ。事前に言っといて欲しかったです」


「ははっ。じゃあサプライズですね」


「あっ、確かにそうですね」


聖雲さんは話しやすくて、一緒にいると楽しい。


…この人となら結婚してもいいかも…?


なーんてね。


でも結婚はやっぱり早いよね。


思えば、何で私ってあんまり恋愛したことないんだろう。


周りに好きになれそうな人がいないから?


んー…。


分かんないや。




海で遊び疲れ、少し休憩をとることにした。


「僕、かき氷食べたい」


「何か食べ物買いに行く?」


「そうだな」


「じゃ、私が買いに行ってくるよ」


「僕も行きます」


「聖雲さん、ありがとうございます!助かります」


晴たちから買ってきて欲しい物を聞き、聖雲さんと一緒に屋台へ向かった。




晴はポテトで、宇宙はイチゴのかき氷、空はレモンのかき氷、っと。


「聖雲さんは何を頼むんですか?」


「僕はコーラを頼もうと思ってます。海さんは?」


「私はオレンシジュースにします。あ、そうだ。おじさんたちにも何か欲しい物があるか聞いてこればよかったですね」


「ああ、そうですね」


「宇宙たちの分を買ってから聞きに行くことにします」


「僕も行きますよ」


「ありがとうございます。でも、大丈夫です」


「…そうですか。気をつけてくださいね」


「はい!」


聖雲さんって本当に優しくて、いい人だなぁ…。




「おまたせ」


「あ、海。ありがとう。聖雲さんもありがとうございます」


「いえいえ」


「それじゃ、仲良く食べといてね」


「え、海。どこか行くのか?」


「おじさんのところに」


「そっか。俺も行こうか?」


「大丈夫だよ。ありがとう、晴」


「おう」




やっぱグアムのビーチは人が多いなぁ…。


ていうか、おじさんたちどこ?


ここら辺にいるはずなんだけど…。


辺りを探していると、後ろから声をかけられた。


「ねぇねぇ」


日本語だ…!


「はい」


振り返ると、少し年上くらいの長身の男子が3人いた。


「あ、やっぱ可愛い」


え?


「君、日本人でしょ?」


「え、はい。そ、そうですけど…」


何だろう…。


「あー…。ラッシュガード着てなかったらもっと良かったのにな」


「はははっ!そんなこと言うなって」


な、何言ってるの?


「ね、今からさ、俺らと一緒に遊ばない?」


「す、すみませんが、一緒に来ている人がいますので」


「それくらい知ってるよ。男子4人といただろ?」


え、なんで知ってるの?


この人たち、なんか怖い…。


「その4人とどんな関係なの?」


「きょ、兄弟とお見合い相手ですけど」


「…あははっ!え、お見合い相手?嘘でしょ?」


「ほ、本当です!」


「君、どこかのお嬢さんなの?」


「ち、違いますけど…。そ、そろそろ失礼します」


「ちょっと待ってよ。俺らと遊ぼうよ」


こ、怖い…。


「これから行くところがありますので失礼します!」


「どこ行くの?ついて行くよ?」


「だ、大丈夫です!1人で行きます!」


「つれないなぁ。行くよ」


え?


すると腕をガッチリとつかまれた。


「わっ、細っ」


「はっ、離してください!」


腕から手を離そうとしても離れない。


「俺らと遊んでもいいって言うんなら離す」


ど、どうしよう。


このままじゃ…。


そう思っていると、少し遠くの方で私を呼ぶ声がした。


「海!」


「そ、空?!」


「誰?兄弟?」


「…そうですけど…」


「へぇ。そうなんだ」


「海!」


「空」


「お前ら海から離れろ」


「ごめんだけど嫌だね」


「…あ?後悔する前に身引いた方がいいぞ」


空の雰囲気がビリビリッと変わった。


「後悔なんてしねえよ」


「…そうか…」


空の顔には見たことのない表情が浮かんでいる。


めちゃくちゃ怒ってる…。


「は、離してください」


「海。目 つむってろ」


「え?」


空、一体何する気?


も、もしかして…。


「つ、つむらない。あなたたち、離したほうがいいですよ」


「なんでだよ」


「…わ、私たちは……」


「う、海?!」


「…え、う、宇宙?!」


何で?!


宇宙にまで迷惑かけちゃう…!


「あんたら誰?海を離してよ」


「お前みたいなチビにそんなこと言われても怖くねえよ」


「っ!う、海を離せよ!空、こいつら殴っていい?」


「俺も殴りたい」


この2人が本当に殴りかかってきたら大変なことになるよー…。


「あははっ!3対2だぞ。お前らが勝てるわけないじゃん」


「いや、余裕だな」


「あんたらどこの組?」


え、この人たちどこかの組の人なの?


やばいじゃん。


「は?…組?…ま、待て待て待て。お前ら極道ってやつか?!」


なんだ、違うのか。


「ああ」


「…ちっ。そのこと早く言えよな。お前ら行くぞ!」


「お、おう」


私の腕から手を離し、どこかへ去っていった。


「海!大丈夫か?」


「うん…」


「何があったんだ?」


「…な、ナンパ?」


「な、ナンパ?!…そ、そうなんだ。俺らも一緒に行くべきだったな…」


「…そういえば、何で来てくれたの?」


「おやじが俺たちのところに来たから、海を探しに行ったんだ。そしたら、男に絡まれてて…」


「そうなんだ。ごめん、心配かけて…」


「大丈夫だよ。海が大事に至らなくて良かった」


空の顔は、いつもの兄の表情に戻っていた。


ガバッ。


「海?!」


私は無意識に空と宇宙に抱きついていた。


「怖かった。助けてくれてありがとう」


「ああ」


2人は私の頭と背中をでて、落ち着かせてくれた。




「よし!遊び再開だ!」


休憩を終えると、男子4人はそろって再び海に向かって走り出した。


私の震えていた心は、4人のおかげでだいぶ落ち着いた。


バシャバシャ音をたてながら、海に入っていく4人の背中を見て、笑みがこぼれる。

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