死にたい僕と死ねない彼女

ごーや

屋上。はじまり

もぅ……疲れた

高校が始まって一年、俺は同学年からいじめを受けていた

原因は……分からない……

どこで間違えたんだろう?

どこからこうなったんだろう?

そんなくだらないことに悩む日々も、今日で終わり

俺は職員室から無断で持ち出した屋上の鍵を使ってフェンスの向こうに立つ


















「さようなら」

そう呟いて身体を前に倒す

これで……終わるんだ





「はぁい、ちょっと待ったぁ!」

何か聞こえる……

何だ?



グイッ

「ぐえぇ!?」

の…どが…

「ぐ、ぐるじぃ」

「あ、ごめん」


あれからどれほど経っただろうか

未だに状況が理解できないから整理しよう


俺は学校の屋上から飛び降りようとした

この世に別れを告げようとしたら後ろから声が聞こえた

その瞬間、喉が締め付けられたのか息が出来なくなり気が付けば視界には日が沈みかけている赤みがかった空が広がっていた

で、起き上がってみれば目の前には同じ制服の髪の長い女が立ってる



で、今に至る

ようやく頭の整理がついたと同時に

「ねぇ、そろそろいいかな?」

女が俺に話しかけてきた

「君、かれこれ五分近く私の事見てるけど……え、何、もしかしてスカートの中見えてる!?ヤダ!変態!!」

「がふっ!?」

女は俺の顎を足で蹴り飛ばした

なんで思考が整理出来たってのにまた混乱するような事するんだこの女は

「ってぇ……」

愚痴のひとつでも吐いてやろうと思ったが、想像より痛みが引かなかったから反射的に顎を抑えた

「あ、ごめん!大丈夫?」

「ぁー痛った……大丈夫も何も、蹴り飛ばしたのはそっちだろ」

「ご、ごめん!てっきり覗かれてるかと思って!」

勝手に決めつけて勝手に人のことを蹴るなよ!

俺は心の中で全力でツッコミを入れた

「ったく、今日は散々だな。自殺しようと思ったのに何故か助かってるし、見知らぬ女に蹴られるし」

「私も全然返事ないから何かと思えば視線が下半身に向いてたし、せっかく助けたのにお礼の一言も言われないしで散々だわ」

放心してたんだから仕方ないだろ

……待てよ?もしかして

「おい、俺を助けたのはお前か?」

「初対面でお前呼びするのか貴様」

「初対面で貴様呼びするのかお前」

くっだらないやり取りを続けた後に女は言う

「てか何?助けて何か不都合があるの?」

俺は少しキレ気味な態度にムカついて

「大アリだよ!俺は一刻も早く人生を終わらせたい!疲れたんだよ……何もかもにな」

しまった、こんな事初対面で話すことじゃ無い

急いで女の顔を伺って機嫌を取ろうとした

「あ、ごめ「あー、自殺したかったの?」

謝ろうと口を開くと女は被せるように言った

女は気にしない様子で続けた

「だったら学校ここじゃない方が良いよ。この高さなら最悪生き残るし、人が多いから飛び降りて直ぐに発見されて治療を受けて呼吸が出来てしまう。そしたら病院の治療費を国が負担してくれるとは言え少なからず払わないとダメだし、学校側も『自殺未遂者を出した学校』と言う不名誉なレッテルを貼られる」

……は?

「大体、今どき屋上で飛び降りるなんてベタな死に方とかw私なら絶対やらないわーwどうせなら死んでも迷惑にならない自殺をしないとねぇー」

何を長々と話しているんだこの女

俺を見て笑う女

理解できず思考停止した俺

何が何だか周りから見ても分からないだろうこの状況

当事者である俺が1番理解に苦しんでるのだから当然か

「ねぇ、聞いてる?さっきからボーッとしてるけど……あ、さっき襟引っ張った時に酸欠なった!?……いや、会話が出来てたから違うか」

「あ、えぇっと、ちょっと……だいぶ混乱してて……聞きたいことが大量にあるんだけど……」

「んあ?あぁ良いよ?なんでも聞き給え少年」

なんだコイツと内心思いながら一番疑問に思うことを聞いた

「お前……誰?」

「……あ、そーいや言ってなかったか」

そう言うと女は改まったように俺の目を見る

「初めまして、私は枙上ふしがみ 三奈みな、君と同じ高校一年生であり……」

「……あり?」

「不死者だ」

……は?

「…………はぁ!?」

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