学園系ラブコメの”ショートショート作品”集(SS作品)Season3

譲羽唯月

いちいちかまってくる後輩が面倒くさい

 田中柊たなか/しゅうはいつも通りの、変わらない生活を好む性格をしている。

 だが、そんな日々に終わりを告げる時がやって来ていたのだ。


「先輩、こんなところにいたんですね。探したんですからね」


 昼休みの間。殆どの人が訪れる事のない学校の屋上に設置されたベンチに、柊は座っていた。

 そこで購買部で購入したパンを食べていたのである。


「なんで来たんだよ」

「そんなこと言って、本当は私と会いたかったんですよね?」


 そう言って、後輩の千秋彩羽ちあき/いろははニヤニヤしながら距離を詰めてくる。

 彼女は柊が座っている場所の前に立つ。


「そんなわけ――」


 柊が話始めようとした瞬間、その場に風が吹いたのだ。


 彼女の制服のスカートがフワッと浮かんだのである。


「先輩、さっきの見ましたか?」


 彩羽はスカートを抑えるフリをしていた。


「み、見てない」

「へえ、じゃあ、この写真を他の人に見せてもいいですか?」


 後輩の彼女が見せてきたのは一枚の写真である。

 それは柊がアホずらをしているところだった。


「ちょっ、なんでそれを」

「じゃあ、何色でしたか? それを言ってくれたら、この写真は誰にも公開しないですから」

「……ピンク色だった……」

「変態ですね、先輩」

「は? 結局、変人扱いされるじゃんか……」

「まあ、この写真は誰にも見せないので、代わりに今日は一緒に帰宅しませんか?」


 彼女からの誘いがあった。


 彩羽の好意を拒否しても、拒否しなかったとしても後々面倒事になるだろう。

 むしろ、一緒にいた方が彼女の事を監視できるのだ。


 だから、柊は一緒に帰宅する方を選んだのであった。

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