第三話「テレジア着任歓迎会」


【お知らせ】

 第一話「大教主への挨拶」にて登場したミレーネを第4秘書、身の回りの雑事担当。カールを第10秘書、身辺警護担当に変更しました。後、この回から突貫工事で執筆しているので変なところがあったらすみません……



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 高級感漂うバーの個室、三人は何かを手にしながら息を潜めていた。

 その部屋は静かな重厚さと洗練された雰囲気に満ちており、壁には絵画があり華やかさを添えている。照明は控えめで柔らかい光がテーブルや椅子の革張りを淡く照らしており、さらに今日はお祝いのために少し彩られた。

 丸いテーブルの上には、既に用意されたシャンパングラスや豪華な食事が並び、見るからに上質なワインボトルもテーブルの真ん中に置かれている。

 三人のうち一人が小さく「もうすぐだ」と呟き、全員が息を詰めた瞬間、ドアノブがゆっくりと回り始めた。


「「「秘書就任おめでとう!」」」


 パーンという派手な音と共に飛び出した紙吹雪の中で、テレジアの反応はいたって穏やかだった。驚く様子は全くなく、ただ微笑んでいる。


「えっ……」


 知的な雰囲気を漂わせる銀縁眼鏡をかけた、肩までのストレートな黒髪がかかっている女性が目を見開き、その隣にいた端正な顔立ちに知性が宿ったダークブラウンの髪をした少し背の低い男性も戸惑った表情でテレジアを見つめる。


「……サプライズのこと、口を滑らせちゃって」


 エリナベルが小声で言いながら手を前で叩き中にいた3人に謝った。


「く、口を滑らせた!?」


 大教主への挨拶の時も後ろに立っていた、男性の中でも高身長でガタイのいい強面の男性がそう叫ぶ。


「まあまあ、寧ろそれでこそエリーらしいじゃない」


 先ほど目を見開いていた眼鏡の女性は叫んだ男の前に立って宥めながらそう言った後、苦笑した。


「だからこそ少しは学んでほしいのだが......」


 先ほどまで困惑していた男性は少し呆れたように答える。


「そこまで含めて私らしいということで許してくれない?」


 エリナベルが舌を出し、手を合わせて可愛らしく謝る仕草を見せたが、そのあざとい行動は、目の前の三人には効かない。誰かが小さくため息をついた後、示し合わせたかのように言った。



「「「それは話が違う」」」



 今日はエリーの奢りだ〜と口々に言う三人を見た眼鏡の女性が手を差し込んで仲裁に入る。


「とりあえずみんな座りましょ」


 と眼鏡の女性が促すと、皆は少し不満を垂れながらも席に着いた。豪華な食事が並ぶテーブルを前に、緊張もどこか解け始めていた。


「それもそうですね」


 テレジアもニコリと笑いながら、目の前に置かれた料理を見て明るい声で言った。エリナベルもそれに頷きながら、目の前の豪華な料理に視線を移す。皿の上には肉料理や、サラダ、パンにパスタなどが美しく盛り付けられている。


「こんな豪勢な食事地元じゃ見たこともなかったですよ」


 とテレジアは感心しつつ、目の前の料理をじっくり眺めた。これほどのごちそうを前にしては、サプライズの失敗がどうこうという話は、テレジアにとってはもはや小さな問題に思えるほどだった。結局、その食い気のあるテレジアの姿を見てすっかり場は和んだ。


「食事には手を抜かない主義だからな」


 端正な顔立ちの男が微笑しながら、ワインのボトルを手に取って続けて言う。


「じゃあ、とりあえず乾杯でもしようか?」


「そうしましょう!」


 エリナベルがすぐに応じ、全員がグラスを手に取ったのを確認した後、エリナベルが続ける。


「テレジアに改めてようこそ! 乾杯!」


 エリナベルがグラスを掲げ、他の皆もそれに続いた。サプライズは台無しになったが、心のこもった歓迎は確かに伝わっている。テレジアは少し照れながらも、グラスを掲げた。


「皆さん、本当にありがとうございます!」


 グラスが軽やかに触れ合い、心地の良い音が個室の中に響いた。そして頃合いを見計らってエリナベルが声をかける。


「さてと落ち着いたところで互いに自己紹介をしましょうか」


 そういうとテレジアが真っ先に立ち上がり皆の視線を集めた。


「じゃあまず私から。初めまして! 第12秘書になりましたテレジア・アンダーベイルです! えっと……趣味は聖典の暗記です。 よろしくお願いします!!!」


 軽い拍手が怒った後に続いて端正な顔立ちの男性が身だしなみを少し整えながら立ち上がる。


「それでは私から。第五秘書、ルーカス・セギュールだ。主に大教主の身の回りの世話やスケジュール管理などを第四秘書のミレーネと行っている。気軽にルーカスと呼んでくれ。」


「セギュール家って隣国の貴族じゃないですか」


 そう言うテレジアに謙遜してルーカスは首を振りながら答える。


「そうだが、色々あって自分は半分逃げ出してきたようなもんだから身分は気にしないでくれ」


「そうなんですか……」


 次は私かしらと言いながら、眼鏡の女性がゆっくりと立ち上がった。


「第六秘書のキャサリン・レイノルドよ。私は書類仕事をメインにやっていて、今回の歓迎会も私が提案したの。キャサリンって呼んでね。」


「キャサリンさん、こんな歓迎会を用意してくださってありがとうございます!」


「いえいえ、いいのよ」


 キャサリンがそう答えた後少しの沈黙が流れ、


「……あ、私ね」


 エリナベルが気が付いたように慌てて立ち上がる。


「テレジアはもう知っていると思うけど第9秘書のエリナベル・メディテよ。皆からはよくエリーと呼ばれているわ。私はこれからはテレジアの教育担当をするコトになると思うけどよろしくね」


「改めてよろしくです、エリーさん!」


 ガタイのいい男性が最後に立ちあがろうとしたが、ソファがわずかに軋みを上げ、座面が一瞬だけ沈んだ。彼の動きに伴って、ソファの端が少しだけ歪み、革張りのシートが柔らかく音を立てた。


「俺は第十秘書兼大教主直属親衛隊隊長のカール・グウェンだ。大体は大教主様の護衛とかをやってるな!」


「おお〜体大きいですもんね。そういえば、大教主への挨拶の時もいましたよね」


「ああ、お前の挨拶は聞いていたぞ! 『元気いっぱいです!』と実にいい返事だった」


 カールは純粋に褒めようとしていたが、テレジアは忘れようとしていたその言葉を思い出してしまい恥ずかしくなる。それを少し笑いながら見ていたエリナベルが話す。


「さてと、自己紹介はこんなもんかしらね。次はーー


「ちょっと待ってください、今日は大教主付秘書による歓迎会なんですよね。」


 テレジアがエリナベルの口元に手を置いて話を遮った。


「ええ、そうね」


 エリナベルが手を退けながら端的に答える。


「そして私は第12秘書なんですよね?」


「そうね」


「なのになんでこの場には私たち含めて5人しかいないんですか!? 半分以下ですよ半分以下!」


「ああ確かにね、それはーー



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テレジア「そういえば皆さんの年齢ってどのくらいですか?」


エリー「ふむふむ、設定資料によるとルーカスが19歳、キャサリンが23歳、カール31歳がテレジアが15歳ね」


テレジア「エリーは?」


エリー「それは乙女の秘密よ」


テレジア「乙女の秘密と言っておきながら今さっき他の女性組二人の年齢はバレましたけどね……」

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