ギター :笹内弘也
第8話
俺はその日、猛烈に悩んでいた。
「どーしたの、ヒロくん。元気ないね」
ギャラスタの福本先輩が俺を見ながらキラキラ笑顔で聞いてくる。
この笑顔はキラキラだし普段はとっても優しいが、練習の時の先輩はとても厳しい。
「……福本先輩」
だけど今日の悩みは楽器のことではなく。
「実は俺、好きな子がいて」
恋のことである。
「好きな子?え、恋の話?」
今は休憩だから別に無駄話しても良いはずだ。貴志なんてどっか行ったし。
「春日美奈って知ってますか?」
「あー。結奈ちゃんの妹。蘭ちゃんの友達」
福本先輩の彼女の米倉と春日はかなり仲良し。
「その子のことが好きなの?」
俺はコクンと頷く。
福本先輩は俺の話を真剣に聞いてくれた。
「ライブに誘おうか悩んでるんです」
「誘いなよ」
俺は首を横にふる。
「どうやって誘うべきか分からないです」
そんな俺を見た先輩は眉間に皺を寄せた。
「普通に誘いなよ。『来てくれ』って」
「春日はそんな普通の男は寄せつけないんですよ」
春日と話したことは多い訳ではないが男と接する感じからして相当、ハードルは高い。
「俺みたいな男が『来てくれ』なんて、何か普通過ぎて。っつーか、断られそうで」
そうゆうの簡単にバッサリ断りそうだ。
大きな音は苦手って前、話してるの聞いたし。
「俺に気なんてちっともないだろうし……」
「じゃあさ、ヒロくん。
断れない状況を作っちゃいなよ」
福本先輩の言葉に俺は首を傾げる。
「なんすか、それ。
そんなことできるんですか?」
福本先輩は優しくキラキラ笑った。
「良かった。俺も助かるよ」
福本先輩のその言葉に俺は更に首を傾げた。
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