第4話
俺は蘭ちゃんをあまり見ずに言った。
「受験のお礼なんていらないよ」
すると蘭ちゃんが俺の顔を覗き込む。
「どうして?」
「だって受かったのは俺の力じゃないでしょ?」
俺の笑顔に若干、不満げ。
「こうしたらゆきくんが喜ぶって、先輩も淳士も言ったのに……」
そして鞄から苺味のクッキーを取り出す。
「…どうしたの?これ」
「むかし、詩織ちゃんに教えてもらった」
そして慌てて「ましたっ!」と、語尾を敬語に変える。
……きゅーん。
「幸也先輩の為だけに作ったクッキーです」
俺の為だけって……。
言わされてんのは分かってても、嬉しいな。
「食べてください」
クッキーくらいなら貰っても良い、よな……。
まさかここでトラップもないだろうし。
「うん、ありがとう」
俺がそのクッキーの入ったタッパーを受け取ろうとした時だった。
蘭ちゃんがパッとタッパーを持ち上げる。
「……蘭ちゃん?」
「私が食べさせます!」
そう言ってクッキーを細くて小さな指で一つ、つまみ上げる。
「はい、先輩」
クッキーくらい、落ち着いて食わせてくれ……。
「あのー……、蘭ちゃん?」
「早くっ!ゆきくん!」
急かされても……。
俺、もうこれ以上蘭ちゃんに触りたくない……。触ったら押し倒しそう……。
しかし蘭ちゃんはそんな俺の気持ちも知らず、クッキーを俺の前に持ってきた。
「あーん、ですよ?」
もう、知らない!
俺は目をつぶって小さく口を開いた。
すると蘭ちゃんはクッキーを食べさせる前に耳元で妙に色っぽく言う。
「この制服、男の人の前で着るの初めてなんです」
そしてクッキーを俺の口に入れた。
そのとき蘭ちゃんの指が俺の唇に触れて。
俺はクッキーを無言で食べ蘭ちゃんの唇に唇で触れた。
「……ゆきくん?」
驚く蘭ちゃんを俺はベッドに倒す。
「へ……?」
呆然としてる蘭ちゃんにもう一度、キスした。
そしてそのまま唇を離さずに蘭ちゃんを抱きしめる。
しばらくすると蘭ちゃんが俺の肩を弱く押した。
慌てて唇を離すと蘭ちゃんが慌てて呼吸する。
そんな蘭ちゃんをまた、襲いそうになるけど。
「ゆきくん、いつもよりチュー長いねぇ」
大きい目で俺を見る蘭ちゃんに思わず笑ってしまう。
「……うん、ごめんね?苦しかった?」
「うん、苦しかった」
そしてクッキーを自分も食べる。
「でも、なんか、楽しかった」
それから俺を見て笑った。
「ゆきくん、なんか可愛かった」
俺は蘭ちゃんの髪を撫でて、軽く頬にキスをした。
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