第四話 こんな男嫌だ

本当に意外かもしれないけど、平安貴族の朝は早い。


私は朝早く、というか夜遅くに目が覚めた。多分現代で言う所の午前三時頃だと思


う。もう一度寝ようとすると右近に止められてなぜか冷たい水を用意してくる。


「姫様、起きたのなら顔を洗ってください。」


「まだ早いでしょ。」


「いつもの姫様はさっさと起きて美容のためと一番に顔を洗っていましたが。」


「…。」


返す言葉もないけど私だって毎日顔を洗ってると言いたくなる。ただ起きる時間


が後四時間位遅いだけだ。


だけど右近の有無を言わせない圧を感じる笑顔でしょうがなく顔に水をかけること


にする。


「冷たっ!」


「姫様!言葉遣いがはしたないですよ。」


そんなん言われても同仕様どうしようもないじゃないか。ただでさえ秋の日の出前でめちゃくち


ゃ寒いっていうのに更に冷水を被らされたら現代の子どもたちは虐待ぎゃくたいだって教育委


員会に訴えるよ。


「あの…本当に井戸の水でよろしかったんですか?」


「へ?何が駄目なの?」


「姫様は記憶を失われる前は若草の朝露を集めてとおっしゃっていたので…。」


「昔の私そんなに面倒くさかったの?」


「はい、それはそれは面倒くさかったです。」


さすがは夕顔だ。同性に嫌われるいい性格していたんだなぁ。


「それにしてもびっくりですよ。姫様が倒れたかと思ったらこんな別人みたいになっ


ているんですから。」


「えっ、倒れたの?」


思わぬ新情報に胸が高鳴る。もしこれで転生の理由がわかったら現代に帰れる…って


言っても私死んでるんだっけ。


「はい、いつものように御簾みすから良い男をお探しになっていたら急に倒れて…。」


「待って、私そんなに男求めてたの?」


「それはそれはどんなときでも人に見られて良いように色々と心がけていましたよ。


お陰で旦那様の遺産もほとんど空っぽに…。」


「ごめん、続きに戻ってもらえるかしら?」


耳の痛い話は聞かないに尽きる。なんてったって私のことではないのだから。


「はい…それで三日間寝たきりになっていて。もう駄目なんじゃないかと思った時に


頭中将様からの手紙が届きまして語りかけるようにお話してたらお目覚めになったの


です。」


「なるほど最悪の寝覚めだったわけね。」


「本当に昔の姫様はどこへ言ったのでしょう?」


右近の言葉に少し胸がチクリと痛む。確かに私は好きじゃない人だけど右近はずっと


一緒に暮らしてきた夕顔が大事に違いない。


いつか本当の夕顔にこの体を返すことができるだろうか。そしてその時私はどうなる


んだろう。


風がザァっと吹いて髪をかき乱す。風の吹く方角を見たその時やっと私は気付いた。


「そこにいるの誰!?」


「!」


人影が走り出す。一体誰だ?考えるより先に体が動いてそいつを捕まえる。


「お前!寝間着ねまきで出てきて恥ずかしくないのか?」


生憎あいにくだけどそういう事言ってる場合じゃないでしょ?こんな人の家入ってまで覗き


するような変態放ってたら世の中に迷惑よ。」


「のぞっ、垣間見かいまみって言え垣間見かいまみ!」


「やってること変わらないじゃない!」


日々走り慣れていないこの体でも捕まえられたのだからよっぽど運動神経が悪いのだ


ろう…と思ったけど体つきを見る限りかなり鍛錬をしている。


「…何ジロジロ見てんだよ?」


「いやぁ…いいカラダしてるなって思って。」


「…お前のほうが変態だろ。」


「はぁ!?どこがなのよ!ねぇ右近?」


こんな物わかりの良くない男には公平なジャッジが必要だ。右近は急に指名されてび


っくりしたのかあたふたしながら言う。


「服をちゃんと着て垣間見をしていた青年と服をまともに着ずに外に出て殿方とのがたに馬乗


りになり挙句の果てにつかんだえりから見える筋肉にれる姫様とどちらが変態なのか…


ですか。一応言っておきますが私はいつでも姫様の味方というわけではないんです


よ?」


うん、なんかごめん。今のを聞いたら誰がどう考えても私の方が変態だったね。


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第四話までご愛読いただきありがとうございます!

やっと恋愛小説になってきたようなそうじゃないような?という感じですが

五話もお楽しみに!


フォロー、星等お願いします!


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