夕顔は枯れない
茄子屋のトモカ
第一章 月の闇編
第一話 こんな寝覚め嫌だ
私は源氏物語が嫌いだ。
いや、ちゃんと言えば源氏物語に出てくる光源氏に恋い焦がれる女たちが嫌だ。
特にあの夕顔、ナヨナヨしすぎてたからそうなったんだよって言ってやりたくなる。
物の怪に殺されたとされる夕顔は最初に
ど、頭中将の正妻の父にいじめられてどっか行って、
その後光源氏と恋に落ちるという一生だ。
まず言いたいのがこのスピード感。恋が神秘的で運命的なものだと思っている私から
したらナンセンス極まりない。
次にこの誰にでもいい顔する性格。別にそれだけだったらまだ良いのに世間知らずで
頼りないと来るんだから
でも一番嫌なのは…、
「夕顔!数学教えて〜!」
下校中に駅の改札口で勢いよく背中にアタックしてきた梨花を思わず
そう、一番嫌なのは私の名前も夕顔ということだ。
名前は親からもらった大切なものって言うけどそれでも嫌だ。そもそもなんで夕顔っ
ていう名前なのかもわからない。
それでも優しい私はホームへ歩きながら親友の質問に答えてあげる。
「良いけど、何がわからないの?」
梨花の指す問題をやってノートを返すと梨花は不思議そうな顔で私を見てくる。
「いつも思ってたんだけどさ、夕顔ってなんで全部成績良いの?特に古典。」
「えっ、どういう事?」
「だってあんなに源氏物語嫌いなのに成績は取れるじゃん。」
「あぁ、そりゃ成績取る勉強してるからね。」
別に問題を解ければ良いなら夕顔がどう思ってるとか考えなくて良い。だから楽しむ
勉強と成績を取る勉強はぜんぜん違う。そういう点で言えば私は楽しむ勉強が本当に
苦手だ。
というのも、私が勉強するのは成績を伸ばしたいからじゃなくて馬鹿になりたくない
からだ。
あの女みたいに…。
私の母はまさしく夕顔のような人だったらしい。
私が物心付く前にどこかへ行ってしまったらしい。
今は父親との二人暮らしだけど、そんな母を持ったおかげで成績は上位だ。
幼い頃よく言っていたお父さんの口癖を忘れられない。
「母さんは情熱的な人だからなぁ。」
そう言っているお父さんは寂しそうに遠いところを見ていた。
きっと母はさぞかし情熱的な恋を見つけたのだろう。バカバカしい。
私はあんなのにはならない。私は男に依存しなくても生きていける術を身につけてや
る。
そう思っていたのに、
「危ない!」
誰かに背中を押された感覚がしたかと思えば梨花の声が遠くから聞こえてくる。おか
しいな、こんなに近くにいるのに遠く聞こえるなんて。遠くから警笛が鳴る。なのに
体は動かない。落ちた
人身事故の賠償金っていくらだったかな。そんなくだらないことを考えながらゆっく
りと目を瞑った。
「…ですから。…様。…夕顔様!起きてくださいませ!」
うるさいなぁ…。私は気だるげに思いながら重い体を起こす。
段々と冴えてきてここがどこか知らない場所だということに気付いた。それに隣で嬉
しそうに話しかけてくる女性も誰かわからない。
「あの…?ここどこですか?あとあなた誰?」
立て続けに聞いたせいか、女性はポカンとした後、悲しそうな目で見てくる。
「そんな…!夕顔様は私がわからないのですか?」
「はい…?」
「お仕えしている右近でございます。それにここは夕顔様のご自宅ではございません
か。」
「はい…??」
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最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。
夕顔ちゃんはここからどうなるのか?
次回お楽しみに!
投稿は一日に一回を目標にします。
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