ノットクールデイ
斗花
第1話
奇跡が起きた。いや、ホントに奇跡だ。
「あぁ、良いぞ」
きーせーきーだー!!
「ちょ、義旭?!お前、正気かっ?!」
秀が義旭くんの肩をガクガクと揺らす。
「離せ、秀。俺は正気だ」
秀の手を肩から冷静に離す、義旭くん。
「初詣くらい別に行くだろ」
そう言って義旭くんはまた本に目を移した。
「日本の正式な風習だ」
そんな義旭くんが今日もかっこいい。
皆川明日香、青春エンジョイ中の華の高校二年生。
ただいま彼氏の義旭くんからデートの許可が降りましたっ!
義旭くんは超クール男子です。
私は義旭くんと付き合ってもうすぐ一年になりますが、手も繋いだことないし、キスなんてもっての他だし、『好き』と言われたことは一度もありません。
そんな私達を見て友人達は『一方通行』なんてヒドイことを言いますが、それは義旭くんのことを何も分かっていない素人の意見です。
恋愛というのは言葉が全てじゃないの。
義旭くんは私のことをいつもピンチから救ってくれるし、辛い時はいつもさりげなく隣に居てくれる。
もうなんていうか……世界一イケてる!
「世界一イケてる男は彼女にストーカーとは言わないんじゃない?」
ツッコミキャラの友人、春日結奈に言われる。
「え?私いま声出てた?」
「うん。
『世界一イケてる男』って何か呟いてたけど」
……まぁ、とにかく思わず声が出ちゃう程、メチャメチャ素晴らしいパーフェクトボーイなのですっ!
「それより明日香。
義旭にデート行ってもらえるんだって?」
よくぞ聞いてくれました!
「そうなのー!聞いてくれる?!」
「聞かなくて良いなら聞きたくない」
そんな結奈の手を握る。
「聞かなきゃダメ」
おはよー、と詩織とスズがタイミング良く教室に入ってくる。
「ナーイスタイミーング!」
私は二人を席に着け、義旭くんとデート大作戦について話すことにした。
今日は終業式だけど校長の話を無視して後ろに並ぶ結奈に私の努力について話す。
「クリスマス誘ったらね、『キリスト教徒じゃない』って断られたわけ」
「さっき聞いた」
「良いじゃん。校長の話よりマシじゃない?!」
「どっちもどっち」
ため息をつき腕時計を見た。
そんな結奈をシカトして私は話を続行する。
「でもそこでメゲないで『じゃあ二年参りしない?』って誘ったの」
「そしたら『良いぞ』って言ってもらえたんでしょ?分かったから前向けって!」
校長の話が終わり、私は慌てて携帯を出し録音モードにする。
「言われなくても向きます!
次は義旭くんの生徒会長の話なんだから!」
結奈は呆れながら「ストーカー」と、頭をかいた。
「いいなぁ、スズは。
一番前で義旭くんの話聞けて。
私も身長縮みたい」
義旭くんが好き。
そんな気持ちだけで私の生活は毎日楽しいのです。
「だけど明日香。気をつけてね?」
教室に戻り掃除してると、詩織に真面目な顔で言われた。
「ん?何が?」
私はほうきを掃きながら詩織に聞き返す。
「だって……。
明日香いっつもナンパされたり絡まれたり……。二年参りって夜遅くだし危ないんじゃない?」
詩織の言葉に私は笑う。
「大丈夫だよー!
ナンパなんて交わせるし、義旭くんといればそんなこと有り得ないもん」
そして机を戻す。
「義旭くんがいるもん!」
義旭くんはいつも私のことを助けてくれる。
私が義旭くんを好きになったのも助けてくれたのがキッカケ。
だから知ってる。
冷たくされても突き放されても、義旭くんは私の、私だけのものだって。
「よしあきくーん!一緒に帰ろー!」
「大声で名前を呼ぶな。それ以上、近付くな」
「はーいっ!」
私のことが好きなんだって。
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