第2話

それにしても。



蘭ちゃんは本当に、どこまで何を理解しているのだろうか。



……恐らく何も分かっていない。



男の力の強さとか、男の欲とか、どんなことをしたら男がドキドキするか、とか。



もう、何も知らな過ぎて俺は常に理性と格闘。



「あ!それでね。

私も明日学校お休みでしょ?


塾は午前中に行くから、一緒に映画に行きたいなあ!」



エクレアのクリームをなぜかほっぺにつけて、蘭ちゃんが俺に赤い顔を向ける。



……はい、ここ!俺の第一ラウンド!


某先輩や某友人は「抱き着かれるとヤバい」だの「手を繋ぐとドキドキ」だの言ってるが、俺から言わせりゃそんなのはもう、何年も昔から乗り越えてきてんだよ!



「蘭ちゃん……、映画はもちろん良いけど。

ほっぺにクリームついちゃってるよ?」



俺が言うと蘭ちゃんは慌てて頬を触る。


このデザートネタは免疫があるからな。



免疫っていうか……、俺の過去の失敗。

思い出しただけで恥ずかしくなる。



簡単に言っちゃえば、アイスを口の端につけた蘭ちゃんに思わずキスしちゃった、ってゆー、話です。



まぁ、それがキッカケで俺達は交際に発展したから今思えば結果オーライ……?



しかし、あれは俺の過去の汚点。

理性が負けた瞬間パート1。



頬を触る蘭ちゃんだが、なかなかクリームは取れない。


あぁ、なんでエクレアにしたんだろう?


せめてクッキーとか飲み物にしてあげれば、こんなことにはならなかったのだろうか?


いや、でもそれだと蘭ちゃんの喜ぶ顔は見れなかった訳だし。



「ねぇ、ゆきくん……。


クリーム取れない。取って……?」



ラウンド1は意外としぶとい。


俺は蘭ちゃんの頬に着いたクリームをハンカチで拭く。



「ありがとー!良かったぁ」



全然、良くないから。



「塾は何時くらいに終わるの?」



俺は話を変えるべく笑顔で話しかける。


蘭ちゃんは俺の家にまるで自宅のごとく上がり、階段をのぼる。



「1時には終わる!


でね、ゆきくん。お願いがあるの」


「なあに?」


蘭ちゃんのお願いは聞ける範囲ならなんでも聞きます。

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