君の制服が変わるまで
斗花
第1話
この話は俺、福本幸也が全バンで優勝した二日後の話。
俺の彼女の蘭ちゃんが受験を終えた日の、とある平凡な一日。
◇◆
俺が部屋の片付けをしていると夕方ごろ家のインターホンがなる。
「ゆきやー、蘭ちゃんよー」
母さんにそう言われ俺は片付いた部屋に蘭ちゃんをあげた。
「お疲れ様、蘭ちゃん」
「ゆきくーん!
鞄をその場に落とし俺に抱き着いてくる。
俺の彼女、米倉蘭は俺の二つ年下の中学三年生。
隣の家に住んでいて小さい頃からよく知ってる。
そして、俺の親友の妹。
「ゆきくーん……」
俺の首に顔を埋め、結構な力で抱きしめてきた。
「どーだった?」
俺が蘭ちゃんの頭を撫でて尋ねると、涙を溜めてる蘭ちゃんが上目遣いで俺を見る。
「落ちちゃったよー……」
その上目遣いがいつも俺の心を揺らすんだよなぁ。
「塾で自己採点したの?」
俺の質問に小さく首を振る。
「塾、サボった」
そして俺の目をマジマジと見る。
「ゆきくんに会いたかった」
……可愛すぎるなぁ、といつも思う。
そしていつも必死で理性を働かせる。
「嬉しいけどね、蘭ちゃん。
塾の先生達も蘭ちゃんが、ちゃんと合格するか絶対に心配してるよ?」
俺が微笑みながら言うと蘭ちゃんが下を向き落ち込む。
「私が来たら迷惑だった?」
「そんなことないよ」
だって君が来るのを予想して、流星先輩とかにもらった雑誌やらDVDを大急ぎで隠したんだから。
だけどそんなことはもちろん口にする訳もなく。
「俺も蘭ちゃんに会いたかったよ」
大人ぶった俺は笑顔をつくり、そう答える。
蘭ちゃんは果たしてこの笑顔の裏側で行われる激し過ぎる葛藤に気付いているのだろうか……?
「じゃあ、明日またちゃんと塾に行くから、今日はゆきくんと一緒に居ても良い?」
「分かった、良いよ」
良いよっていうか……、むしろ嬉しい。
「じゃあね、私コンビニに行きたいっ!」
蘭ちゃんと俺の暇潰しは専らコンビニという決まりになっています。
なんてロマンのないデートなのだろうか。
「じゃ、行こうか」
俺は財布を持って上着を羽織り、二年前のバレンタインデーに蘭ちゃんからもらったマフラーを首にまいて部屋を出た。
蘭ちゃんはセーラー服の上に紺のピーコートを着てる。
俺この子と並んだらチャラい高校生だなー、って思われるだろうな。
蘭ちゃんはしっかり俺の腕を組み、だいぶ暗い道を俺に追いつくため少し早足で歩く。
「ゆきくんは明日、何か予定あるの?」
コンビニに着きデザートを見ていると、蘭ちゃんが言う。
「何もないかな。祝日だし」
俺は苺プリンと蘭ちゃんが見てたエクレアをかごに入れ、レジに行く。
「じゃあー……」
何か言おうとする蘭ちゃんに買ったエクレアを手渡した。
「はい、蘭ちゃん。今日はお疲れ様」
「ゆきくん、何で私の欲しいもの分かるの?!」
蘭ちゃんは笑顔になってビックリしている。
「だって、見てたでしょ?」
俺が言うのとほぼ同時に俺に思い切り抱き着く。
「ゆきくん大好きー!」
何か買ってあげたりしてこういうことを言われると、若い子に貢ぐおじさんの気持ちが少し分かる。
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