episode 1 映画のうわさ
私が映画に出ているといううわさは本当なのか。私――
何しろ「来海」と書いて「きまち」と読ませる私の苗字はめずらしいし、来海里奈を名乗る主人公の性格や雰囲気が私そっくりというから困る。さすがに演じた子役は私ではないようだけど、遠目に映ったときに本物と入れ替わったと勘違いしたそうで、勝手に題材に使われた旅行当時の私を知る女子二人からは「絶対関わってる」と太鼓判を押されてしまった。
この二人は現在高校一年生の私と小学校から一緒で、特に仲良しの
「里奈ってあの旅行の前後で変わったんだよね。それが描かれてた」
「うち、そんなに変わった? あのころから悪い夢を見るようになったくらいで、中学生になったときは成長したかもって思えたけど……」
正直なところ自分ではわからなかった。最近になってそう、お母さんから短い間だけ私が変だったと聞かされたっけ。いや、問題は私が変化したかどうかではなく映画がどこまで忠実に私を表現したか。話を聞くだけで判断するのは難しい。
私も観なければならなかった、その映画を。
まずは映画館を調べてみたが、映画『まっしろな星のかけらは想いをとばす』は映画館ウェブサイトはおろかインターネット全体の検索にも引っかからない。遠い昔の作品ならまだしも最近の映画の情報がないのか、私があの雪に抱かれてまだ四年にも届かないのに。私に話した同級生のうそ? それはない。そうだ誰からもどこどこの映画館で観たと聞いてないし、花はDVDだと言っていた。「映画」と銘打ちながら最初からビデオディスクだけだったとして、その情報すらないのはよほど流通しなかったか私家版かもしれない。親に内緒で我が家を探したけれど、それらしい代物は発見できなかった。
しかしこうなったら花から借りればいいのだが、映画の内容うんぬんの前に一つ心配なことがある。自分の旅行を再現した映画を観て、それが事実に即しているか私に判断できるのだろうか。
実は私、あの旅行のことをよく覚えていないのだ。
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