第31話 妄想から生まれた新企画
おい、待て。
マリアン、リスナーに洗脳されるんじゃないぞ。
“クエストなんて二人きりだろうし、家から離れていい息抜きになるだろうからさ”
「二人きり!?」
あぁ、この顔はたぶんマリアン劇場の幕開けだ。
もうあっちの世界に、飛んでしまったかもしれない。
「わたくしの頭の中に空想が広がっていきますわ。彼と一緒にクエストに行って…彼と一緒にお昼…そして、彼のピンチをわたくしは颯爽と助けて……」
完全にマリアンは、妄想の世界に飛んで行ったな。
「——彼と私は森の中を歩いていますの。
『腹減った』
彼のその言葉に小さくため息をつきながらも、わたくしは少し嬉しくなりながら、バックを漁ったりなんかして。
『しょうがありませんわね。少し休憩にしましょう。
こういう時のために、サンドウィッチを持ってきましたわ』
近くにある大木の下に移動して、バッグから取り出した少し大きめの箱を手渡しますの。
『お、気が利くな。料理も上手いし、こんなに素敵な君はきっといいお嫁さんになるね』
彼は地面に腰を下ろし、箱を受け取りながら満面の笑みを見せてくれますの。
そんな彼の笑顔と言葉に、恥ずかしがるわたくし。
『あら、いやですわ。あなた以外の誰のものにもなりませんわ』
自分で頬が赤くなるのがわかるくらい、気持ちが高揚してしまいますの。
わたくしが幸せな気持ちに浸っていると
その時でした。
ガサガサッという音とともに、突然大木の影からモンスターが現れ、彼に襲いかかるではありませんか!
わたくしは迷わず剣を抜き、モンスターの懐へ一瞬のうちに潜り込み、その勢いを活かして流れるように、モンスターを斬り上げるのよ!
川の流れのように華麗な一撃に、モンスターはその場にゆっくりと倒れ、動かなくなったのです。
その動きを見て、驚いた表情の彼。
『ありがとう、マリアン。君は強さも兼ね備えているんだね』
その感謝の言葉に、わたくしは再び気持ちが高揚しちゃったりして。
『貴方を襲う輩は、このわたくしが絶対に許しませんから』
彼の手がわたくしの体を優しく引き寄せてくれますの。
『僕にはやっぱり君が必要だ。こうして君といつまでも冒険して、ずっと二人で一緒にいたい。僕も君を守るから』
……あら?なにか助ける立場が逆のような?」
“マリアン劇場は終わった?”
“なんだか、マリアンが勇者みたいな展開になってたよw”
“長かったねー、おかえりーw”
ハッと夢から覚めたマリアン。
ようやくここに戻って来れたか。
「今のは……、わたくし、登録してきますわ!!」
はぁ? まだ夢から覚めていないのか。
“え?w 唐突!? ww”
“いやいやw それは小説の話だから、わざわざ合わせなくていいんだよ?w”
ほら、リスナーさんたちも言っているじゃないか。
寝言は寝て言え。
まだ、あっちの世界に行っているのか。
「いいえ! わたくしがやりたいんですの!」
マリアン……、鼻息が荒いんだけど。
「リスナーさんからの提案に、私の妄そ……好奇心が爆発しましたわ。そうよ、確かに、いつも彼がクエストに行く姿を窓から見ているだけじゃつまらない。でも、冒険者になって一緒に行けば、ずっと彼のそばにいられますものね」
“でも、貴族のご令嬢がやることじゃないんだよね?www”
その通りだ。
リスナーさん、マリアンの暴走を止めてくれ。
「いいえ!貴族だとか令嬢だとかいう立場は関係ありませんわ。先ほど言ったように、わたくしがやりたいからやるんですの。
それに例えばですが……わたくしが戦う場面を配信すると言ったら……皆さま見たいかしら?」
そこでリスナーを誘導するなんてずるいぞ。
俺の意見は、聞かなくてもいいのか。
“応援するする!!”
“絶対見に来る!!!”
“もしかしたらさ、戦闘になったら投げられるアイテムも武器とかに変わるんじゃね?”
“確かに! 今までも話の内容次第で、投げられるアイテムの種類も変わってたもんな!”
“金タライとかwww”
“花火は元からあるアイテムだけど、誰かロケット花火あげたよな”
“ナイス!考察厨!!”
ちょい、待った。
俺の意見は?
マネージャーを完全に無視して、盛り上がるんじゃない!
「嬉しいですわ。皆さま! 応援してくださるのね。では、アイテムを投げていただき、それを使ってモンスターの討伐をする! ……なんて企画はいかがかしら? 皆さまが投げてくださるなら、やってみたいと思うのですが……」
マリアンはリスナーの反応を伺うように提案してきた。
“その企画、面白そうですね!”
“それなら、全然投げるわww”
“俺たちのマリアンに、ケガ一つさせないために全力で投げる!!!”
“ならアイテムについて、もう少し把握しといた方がいいよね”
“じゃ、実験が必要だ”
“それからもう一つ、クエストでモンスター退治って、
ギルドで冒険者登録しなくちゃいけないでしょ?出来るの?”
実験? 俺のスマホだぞ。
しかもスキルを付与されている。
誰にも言えないが。
「そういえばそうでしたわね。忘れていましたわ。そうですわね……とりあえず実験は後日やるとして、冒険者登録に関しては、彼に聞いてみましょうか」
やっと、俺に出番が回ってきた。
「いいわけないだろ、何考えてるんだ。俺のスマホなんだからな。勝手に企画を立てるなんて無しだ。企画は、マネージャーの俺が立てる」
「あら、あなたは今日お休みでしたわよね。気を利かせて、話題を振らないようにしてましたのに」
“あれ? モブいたんだ。オフだって言ってなかった?”
“俺も、てっきりいないのかと思ってた”
「俺は最初からずっと、ここで聞いていた!」
“ってか、また声だけか”
“マネージャーさん、顔出して~”
“出さないよ、きっと。モブだし”
「もう! いつも! わたくしには怒ったような態度ですのね」
「君が勝手に企画立てるからだろう。だいたい俺のスマホなんだからな、お嬢様のわがままで使っていいわけないだろ!」
“まあ、まあ、まあ、まあ…、”
“せっかく、マリアンが自分から行動を起こそうとしているのに”
“もうちょっと、応援してもいいんじゃね?”
マリアンは、うつむいていた。
そして、今度は窓の外に視線をそらした。
絶対に俺を見ようとはしない。
あれ? 泣いてる?
俺、言い過ぎた?
「そうですわね。彼はお休みでしたから、ちゃんとした意見は後で聞いておきますわ。今日は皆さまのおかげで、いろいろ勉強になりました。
後のことは、実際にギルドに行って仕事している彼が詳しいと思うので確認しておきます。
この企画…………絶対に、成功させましょうね! アドバイスなどたくさん書いてくださり、ありがとうございましたー」
結局、やるんかーい!
マリアンは、無理に明るい声を出して、リスナーさんへ締めの言葉を残し、部屋から出て行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いつもツンデレ令嬢を応援していただきありがとうございます。
配信マネージャーのモブからお知らせがございます。
カクヨムでは、12月26日から『積読消化キャンペーン』をやってます。」
「モブさん、『積読消化キャンペーン』って何ですの?」
「知って腰を抜かすなよ、マリアン。フォローしている作品を、10エピソード以上読んだ方には、最大一万円分のアマギフが当たるという、カクヨム太っ腹キャンペーンだ。
ぜひこの機会に【ツンデレ令嬢を人気配信者にしたモブだけど、リスナーが協力的で助かってる】のフォローをしてください!」
「あら、マリアンの部屋はフォローしなくてもよろしくって?」
「作品のフォローとマリアンのフォローは同じだから安心しろ」
「あらん」
詳細はこちらです👉 https://kakuyomu.jp/info/entry/tsundokucampaign
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