絶対に目立たずにスローライフを送りたい俺vs絶対に主人公を無双させようとする異世界

西園寺若葉

第1話 異世界行きおめでとうございます!

-side ハルト-



「眠い……早く帰りたい……」



 目立つという行為はリスクだ。

 ストーカー被害、他者からの嫉妬それを全て回避する必要がある。

 だから俺は、俺は平穏に目立たず、今日も社畜として社会に出荷される。

 はずだった。



 --キーーーッ!



 横断歩道を歩いていると、トラックにはねられた。



 ……と思ったら目の前がパーティ会場になる。天井が高い。テーブルや壁などの周りは大理石だ。どこかの神殿と言われても信じるだろう。



 --パンパカパーン!パパパ……パンパカパーン!



 どこかで聞いたことのあるBGMだ。

 いきなりすぎて状況が把握できない。



「おめでとう」

「おめでとう!」

「おめでとう〜!」



  目の前には左右に黄色い頭の双子の男の子と中央に黒髪の女の子が男の子の少し前に立っている。天使みたいな輪っかを頭につけている。服装も白い少し透けた格好だ。



「……何が?」



 本当に何がおめでとうなんだろう?



「おめでとう」

「おめでとう!」

「おめでとう〜!」



 だから何がだよ。



「あっはっは!ラノベの世界好きだろう?」

「無双物好きだろう?」

「派手にやっちゃってください」

「はあ……?」

「「「ガッハッハッハ!」」」



 天使たちは豪快に笑っている。

 やっちゃってくださいって言われても……、スキルとかゲットするのだろうか?



「大丈夫だ!おまかせ転生特典もちゃんと与えられる!」

「大丈夫だ!なんもしなくてもお前が無双できる異世界に錬成できるぞ!」

「大丈夫〜もうすでに転生の準備は完了してるわ!君は何も考えなくても次の世界に行けば良いからね〜」



 次の世界……、そうだ俺死んだった。

 その事も聞かなきゃ。

 家族は友人は?

 色々な感情が溢れてくる。



「あっ……!そうだ、精神セラピー忘れてた。ごめんね〜」



 右にいる男の子が手をかざすとふわっとそういう溢れ出る感情が薄くなっていく。

 なんかもう、確かにそんな事どうでも良いかもしれない。



「おっ……!準備出来たみたいだぜ!」

「じゃ、向こうで“ステータスボード”と唱えたら、転生特典は確認できるから!」

「思う存分、無双して目立ちまくって楽しんでください〜!」



 ……ん?そっか、ラノベでいう異世界転生ってそうか。無双して目立ちまくって、ハッピーエンドのやつか。

 あれ?それって今の俺の生き方と真逆では?急にそんな生活に対応できるのか!?

 ちょっと、今からでもスキルの事とか色々説明してもらって変えられないのだろうか?



「あの……」

「おめでとう」

「おめでとう!」

「おめでとう〜!」

「お、おう」



 というか、今更気づいたんだけど、もしかして、この3人、さっきから「おめでとう」ってとりあえず言っとけば良いみたいな勢いでゴリ押してる!?



「「「じゃあね〜」」」



 気づいた時には時既に遅し。

 あっという間に俺は神様に転生させられてしまっていたのだった。




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