第14話 自分の気持ち
「疲れた......」
放課後の校舎、夏紀は廊下を歩きながらため息をつく。
窓の方を見るとすでに空は紅色に染まっており、日が落ちそうになっていた。
七時間授業の上にどうしても理解できなかった問題を先生に聞きに行っていたので帰る時間が遅くなってしまったのだ。
そろそろ期末テストの勉強を始めなければならない。
まだ先ではあるのだが今回のテストの範囲は難しいので継続的に勉強する必要があると考えたのだ。
二週間前の勉強では間に合わない。
(とりあえず今日は疲れたし、勉強は明日の朝から......だな)
そんなことを考えながら廊下を歩いていく。
すると、話し声が聞こえてきた。
「そういえば静音のことまだ好きなのか?」
そして静音の名前が夏紀の耳に入ってくる。
夏紀は声が聞こえてくる教室を横切る前に足を止めた。
盗み聞くのは良くないかもしれない。
しかし夏紀にとっては気になる話題だった。
「正直まだ好きだぜ」
「おお、まじ? 結構仲良いし、いけるんじゃね」
「あー、まじで可愛いし、俺どタイプなんだよなあ」
「結局顔かよ」
「いや、違う、性格含めて可愛い。そんなもん付き合いって思うだろ?」
夏紀はそれを聞いて何故か胸が痛くなる。
誰が話しているか見当はついているがチラリと教室の中にいる人物を確認する。
二人の男子がいたのだがやはりその中に北条がいた。
(やっぱり静音のことが好きだったのか)
前に放課後に校舎前で静音と話していた時、夏紀から見ても好きなのだろうなとわかる距離感だった。
「でもさ、誰か知らんけどよく一緒にいる男子いるっしょ? 身長高めの子。付き合ってるんじゃないの?」
「あー、今日話したけど付き合ってないらしい」
「まじ? てっきり付き合ってるのかと」
「昔からの友達なんだってさ......だから俺、告白成功すると思う」
「どっから湧いてくるんだよ、その自信」
「その子を除いたら異性で一番仲良いの俺だろ? で、長年友達だったらこの先もずっと友達でいるわけ。じゃあライバルはもういないと」
なぜ、ここまで鼓動が早くなってしまうのだろうか。
静音のことを考える時、どうして体が暑くなってしまうのだろうか。
(......いや、考えないでおこう)
あることに気づいた。
しかし夏紀はそれを心の奥に封印することにした。
自覚したら今の静音との関係が崩れてしまいそうだったから。
それに少し今はタイミングが悪い。
「......最近、俺、おかしいな」
夏紀は小声でボソッと呟く。
(静音が予想以上に大人になってびっくりしてるだけ。そう、それだけ)
「告白はいつするん?」
「来週あたり、結果は報告する」
「おお、頑張れ」
夏紀はぎゅっと拳を握りしめた。
胸が苦しくなっていくのを感じる。
(恋してたとして、俺に振り向いてくれる訳ないか)
そして少し遠回りして帰ることにした。
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